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あの人の森は?
あの人の“森”語り:浜田 久美子さん

あの人の森は?

あの人の“森”語り

私が森のことを書くのは、本への恩返しなんです。 第七回ゲスト 浜田 久美子さん プロフィールはこちら

元気を貰ったスギとの抱擁

「森のことを書こう」と思ったきっかけは、木に恩返しをしたかったからなんですよ。もともとは「森林」ならぬ「心理学」が専攻で、精神科でカウンセラーを勤めたこともあります。結婚を機にキャリアアップのために大学院に戻ったんですが、仕事に戻る時期に鬱状態になってしまいました。厄介なことに、まさにそれが専門領域なので頭はべらぼうに分析してしまうんです。自分で自分を追い詰める典型的なパターンになって、そのうちものの見事に体が言うことを聞かなくなってしまいました。

夫婦でアウトドア好きだったので、夫が「キャンプに行こうよ」と誘ってくれて、奥多摩の氷川キャンプ場に出かけました。森というより河原沿いの斜面にポツポツとスギが植わっている、みたいな所です。テントから炊事場まで行く途中に何の変哲もないスギが立っていて、そこを通るとなぜか「うん?」と気になる。どの木というわけではなく、通るたびに気になって触ったりすることを繰り返していました。

あとから考えると、スギって樹皮がふかふか柔らかくてあたたかい木なんですね。ふと抱きついてみたら、すごく安心感があった。何て気持ちがいいんでしょうと思って、あとは木を見ると抱きつくという怪しい人で(笑)。別に大木でもなくても、木なら何でもよかったんです。細ければ細いなりにただ触れて、大きかったら抱きつくみたいな形で、キャンプ場の裏山を散歩してたくさんの木に触れるうち元気になっていったんですね。

ところが家に戻るとまた、バッテリーが切れるような感じで元気がなくなる。それで週末になると、「キャンプ行こう!」と言って、木に触って抱きつくというようなことを、何か月間かしていたんです。そうするうち、ある日スコーンと「あ、私、戻ったな」と思う時があって、すっかり元気になりました。あれは不思議な体験でした。木に助けてもらったと、ほんとに思ったので、とにかく何か木にお返しをしないと死ねないなと、その時から考えていたんです。

 

残った木が腕を伸ばしている!

私が育ったのは関東平野の新興住宅街で、山にも森にも縁はありませんでした。ちょうど高度成長期で、宅地になりそこねた小さな雑木林が近所にありましたが、暗いし、変な人が隠れていそうで怖かったので、近づきもしませんでした。造成されてその雑木林がなくなったときにはほっとしたくらいです。だから「木にお返しをする」と言っても具体的な案はありませんでした。ふと「森のことを書く」という考えがわきましたが、森林のことも知らなければ書く経験もなかったので、自分で自分に「何、それ?」と聞いているような状態でした。

ある日、夫が出張から帰ってくるなり着替えもせず、「森林塾っていう塾があってさ」と、ばーっと話し始めたんです。夫が仕事で訪問した伊那のKOAという会社が運営する塾の話でした。元信州大学農学部教授の島﨑洋路先生が提唱する「山仕事は習えば誰にでもできる」という考えの元に山仕事を習うというのです。それまで私が読んだ森林の本には「山仕事は3Kで専門的で大変で」みたいな重苦しい話しかなかったのが、全く違う視点だったので、すぐに「私、その塾入る」と言いました。夫も「じゃあ、おれも」という話になって、2人で森林塾に通うことになりました。

 

島﨑先生の話も森での体験も非常にリアルで面白く、本を読むのとは全然違いました。例えば、いい人工林の条件を、「樹間は樹高の2割の間隔あること」という明解なセオリーで説明していて、一目瞭然なのでとても納得がいく。それに、何と言っても初めての間伐体験は感動的でした。混んでいる森は1本切るだけで変化が明らかなんです。光が入ってきて、残った木も、まるで腕を伸ばしているように見えるんですよ。「あー、息がつけた」っていう感じに。

草刈りもしたことがない人種にとっては、そのダイナミックさは驚異的な体験でした。以来、植林、測量、測樹、山菜採りや炭焼き、道づくり、下草刈りと、毎回のように通いながら山仕事を一通り体験して、先生の言う通り、山の手入れはちょっとやればいいことがわかりました。でも、実際にはその山仕事の主役の山主さんは、そこには来ようとしないんです。そういう森を取り巻く現実的な限界もわかるようになりました。そうして気がついたら「これを書くんだな」とテーマが見つかっていたわけです。

浜田 久美子さんの著書
『森の力―育む、癒す、地域をつくる』

森の本・DVD:森の力─育む、癒す、地域をつくる

近著『森の力』では、森に関われば関わっただけ人に恩恵があるということをいろいろなケースで書きました。次は逆に、人が関わることで森の側はどうなっているんだろうというテーマに向けて動き始めています。私の勝手な想像では、木や森の声に耳をすまして働いている人がいるに違いないと考えていて、まずはそういう人を取材して、具体的な仕事を通して探ってみるつもりです。木に恩返ししたいという気持は変わらないので、これからも同じようにやっていきますが、日本の森の問題を解決するのが簡単でないこともよくわかっています。ただ、木への恩返しの究極の夢はとてもシンプルなんです。それは、日本中のみんなが一人ひとり心の中で「木はすごいな」と敬ってくれさえすればいい、というものです。そう願いながらこれからも森のことを書き続けていこうと思います。

 

おしらせ

浜田 久美子さん ラジオ出演情報

NHKラジオ第一 ラジオ深夜便
「ないとガイド〜自然に親しむ〜

1回目のテーマは「森のようちえん」。(内容は予告なく変更になることがあります)

<放送日>
2009年5月24日、7月26日、9月27日、11月22日
2010年1月24日、3月28日
全6回(奇数月第4日曜日)
午後11時18分位〜50分位

○全国のNHKラジオ第一周波数
http://www.nhk.or.jp/radiodir/tec/tec.html

 

プロフィール

浜田久美子

作家
NPO法人伊那谷森と人を結ぶ協議会 副代表
NPO法人森づくりフォーラム 理事
NPO法人共存の森ネットワーク 理事

1961年東京生まれ。
早稲田大学第一文学部卒業 横浜国立大学大学院中退
精神科カウンセラーをへて、木の力に触れたことから森林をテーマにした著述業に転身。森林や木と自分たちの暮らしがつながっている実感が、人にとっては安定を、森にとっては安泰をもたらすという視点から活動。長野に地域の材で家を建て、東京との二住生活実践中。
著書に『森をつくる人びと』『木の家三昧』『森のゆくえ』(以上コモンズ)
『森がくれる心とからだ〜癒されるとき生きるとき』『スウェーデン森と暮らす』 (以上全国林業改良普及協会)
最新刊は『森の力―育む、癒す、地域をつくる』(岩波新書)

 

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