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第七回森の聞き書き甲子園のようす

毎年100人の高校生が、おじいちゃん・おばあちゃん世代の森の名手・名人に一対一で話を聴き、文章にまとめて発表する「森の"聞き書き甲子園"」。2008年度の活動を報告する第7回フォーラムが、3月29日(日)江戸東京博物館ホールにて開催されました。聞き書き甲子園に参加した高校生と家族の方、森の名手・名人たち、関係団体や企業のサポーターなど、全国各地から多くの熱意ある人々が駆けつけ、終始あたたかい雰囲気の中で進行したフォーラム。その模様をレポートします。

●基調講演:里山の暮らしから考える森づくり

開会の辞に続いて、まだ緊張した空気が流れる中、「森の名手・名人」への認定証と高校生への「聞き書き修了証書」が授与され、名人代表と高校生代表に惜しみない拍手がおくられました。そして、竹田純一氏(里地ネットワーク事務局長)の基調講演へ。竹田さんは、40数年前の幼い頃にしばしば訪れたという、祖父母や親戚が暮らす東京郊外の里地集落の思い出から話を始めました。

神社の裏山から水を汲み、雑木林で薪を拾ってご飯を炊き、採れた野菜や放し飼いの鶏、卵、小川で釣った魚をいただく。田んぼにはメダカ、タガメ、ドジョウなどがいて、カブトムシ、クワガタ、ヘビ、イチゴ、ニワトリ小屋、堆肥など、いろいろな匂いがする。わずか7、8軒の家しかない半径2kmほどの「八戸(やと)」。そこから一歩も外に出ることなく亡くなった叔母さんもいた......そんな居心地の良い場所、人の暮らしと森や山がつながっている里地が、どんなに大切なものであるかと気づいたのは、32歳の頃だったと言います。そこで竹田さんは、金融関係のシンクタンクの仕事を辞め、日本のふるさとを守ろうと決意。全国各地の里山を歩き、そこで暮らす人々に話を聴き、風景を観察しながら水や資源の循環を一つ一つ見て、里地保全活動を進めています。

イラストを用いて講演される様子 手書きのイラストによる里山風景などもまじえた臨場感ある講演に、会場の高校生たちも興味深そうに聴き入っていました。

●名人と高校生が再び出会い、対話する

第二部は、いよいよ森の名人と高校生の出番です。参加した100人の中から、特に優れた聞き書きを行った高校生数名に「優秀作品賞」と「優秀写真賞」が授与されたのに続き、文筆家・インタビュアー阿川佐和子さんと作家の塩野米松さんがステージへ。高校生の聞き書き研修の講師であり、また、優秀作品を選ぶ審査員でもある塩野さんから、「今回で7回目を迎えるが、全体の印象として年々上手くなっている。高校生が名人の"方言"をちゃんと表記し、聞いた話をちゃんと咀嚼して書いているので読みやすく、やり取りが洗練されてきた。それは、聞き書き甲子園という伝統が育ちつつあるということ」との総評がありました。参加した100人の中から代表作品として選ばれたのは、次の6作品。

○名人:野鍛冶職人の安保新次郎さん(秋田県能代市)
 聞き手:国安あずみさん(埼玉県立大宮光陵高等学校一年)
 作品:「職人は死ぬまで修行だ」

○名人:茅葺き師の廣山美佐雄さん(茨城県小美玉市)
 聞き手:片波見せるささん(和光高等学校一年)
 作品:「茅はいきもん」

○名人:木漆工芸職人の河野清志さん(愛知県北設楽郡設楽町)
 聞き手:渡邉歩惟さん(愛知県立岡崎聾学校高等部一年)
 作品:「木の道を歩む益荒男〜木漆工芸職人・河野清志さん〜」

○名人:苗木生産の上田穣さん(兵庫県美方郡香美町)
 聞き手:足立沙織さん(兵庫県立柏原高等学校一年)
 作品:「苗木と生きた51年〜未来を育む苗木産業」

○名人:シイタケ栽培の山本保幸さん(鹿児島県霧島市)
 聞き手:川崎智佳穂さん(宮崎県立都城西高等学校二年)
 作品:「森を守り育てているだけよ...」

○名人:伝統的焼畑農法の椎葉クニ子さん(宮崎県東臼杵郡椎葉村)
 聞き手:中山きくのさん(宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校四年)
 作品:「飽食の時代に〜焼き畑からの声〜」

高校生と名人の対話セッションの様子 優秀賞を受賞した国安あずみさんへのインタビューでは、「父と妹と一緒に、野鍛冶職人の名手に話を聞きに行き、刃物が好きな父がいっぱい質問をした」と話す国安あずみさん、「レポートは手伝っていません!」と会場で応えるお父さんの微笑ましい場面も。

また、伝統的焼畑農法を取材した中山きくのさんは、「レポートでは自然に対する畏敬の念を伝えたかった。今年は伝統について研究したい。将来は山村・地域開発みたいな事をやりたい」と抱負を語ってくれました。

そして、森の名手・名人と、その方に話を聞いた高校生の対話スタイルのインタビューへ。3組の名人と高校生が登場した中、3番目に登場した名人の廣山美佐雄さんは、78歳の今も1年に10軒もの屋根の葺き替えを行っているという茅葺き師。話を聞いた高校生の片波見せるささんが、「自分がつくる以上は長持ちする茅葺き屋根をつくりたいと、妥協を許さない廣山さんを、心からすごい!と思った」と感想を言うと、真っ黒に日焼けした廣山さんの表情がほころび、本当に嬉しそうな様子でした。

●大切なものを未来へつなげよう

終盤は、森の聞き書き甲子園卒業生による活動記録ビデオ「草木とともに生きる」の上映。山形県飯豊町の広河原というたった2軒の集落に足繁く通い、そこでの春夏秋冬の暮らしを手伝いながら撮影したドキュメンタリー映像は、自然と深く関わることで生きている里山の暮らしをリアルに伝えるものでした。

最後は、森の聞き書き甲子園の卒業生や、共感した人々が集まって出来た「共存の森ネットワーク」メンバーからのメッセージ。「広河原集落に暮らすおばあちゃんの『守りたい』を大切にしたい。それが自分たちの言葉になった」、「100年先を考えている名人に出会って感動した。先人の知恵の中には大切なものがある、それを次世代へつなげて行きたい」など、熱く真摯な言葉でこのフォーラムを締めくくりました。


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