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スイス林業と日本の森林 (近自然森づくり)

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スイス林業と日本の森林 (近自然森づくり)

著者:浜田 久美子
出版社:築地書館
価格:2,200円

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スイス林業と日本の森林 (近自然森づくり)
 

氷河に削られた痩せた国土、急峻な山国のスイスで、
豊かな林業が成立しているのはなぜか。

間伐など森づくりのボランティアイベントに参加すると、こんな説明を受けることがよくある。国の拡大造林政策の失敗によって、林業の担い手が減り、手入れが遅れた森では良い木材となる木が育たず、生物多様性が損なわれ、土が流出して災害の種ともなりうる、だからボランティアの助けを必要としている、と。

人工林でも天然林でも、この先も美しい森が残って欲しいから手伝うのだけど、ボランティアを終えて森の見えない都市部で暮らす日常に戻ると、何かやっぱり(森づくりを手伝ったという)実感が残らない。実現したい未来の森のイメージがつかめていないからだ。私は100年後の日本の森がどうあって欲しいのか。

スイスでは、1980年代、90年代とハリケーンによる大きな被害が続いたことで、同じ樹種、同じ樹齢で構成される森林の脆弱さを認め、それをきっかけに災害に強く安定した森づくりを目指して「近自然森づくり」に移行していく。

「近自然」とは「close to nature(自然に近づく)」、「near natural(自然に近い)」の両方の意味を持つようだ。人が自然に近づき、自然に近い状態を管理することで、「自然と人の豊かさの共存が持続すること」を理想とし、スイスでは治山・治水・街づくりなど公共事業開発の根底にある考え方とのこと。「近自然森づくり」では、森と人の両方を豊かに持続させて、どちらも犠牲にはしないというから素晴らしい。でもそんなことが可能なのだろうか?

スイスの森、たとえばチューリッヒ州の木材生産林でなら、最低30%の広葉樹が混ざっているのが一般的で、土壌の質を維持し、災害リスクに耐性のある安定した森を目指す。また、将来収穫する育成木をより優れた材に育てるため、葉には光をあて、幹に光をあてないよう、サポーター木を残して間伐するという。さらには、広葉樹など多様な樹木の配置・高低差を利用して林内に取り込む光量を最大化し、効率の良い成長を促していると紹介されていた。これがリクリエーションの森なら作り方はちがってくるけれど、利用目的が違っても、より自然に近くある状態を求めて施業方針を決めていく。

自然の作用に対する徹底した観察と実践のカルテが増えるほど、必要な手入れは少なくなり、次世代につなぐ豊かで安定した森をつくることができるという。時間は掛かりそうだけれど、それこそが正しい考え方に思える。

自然に近い森をつくるのだから景観も美しくなるだろう。四季を伝える樹々の変化も楽しめる森になるはずだ。すぐにスイスと同じことを同じように日本に導入できるわけではないだろうが、ぜひ日本の森づくりもそうあってほしいし、そうした森づくりへの転換に向けた作業にボランティアが必要ならばぜひ参加したいし、参加を呼びかけたいと思った。

そしていよいよ3章からは、どうしたら日本に取り入れることができるかを模索する。スイスから呼んだフォレスター、ロルフ・シュトリッカー氏によるワークショップの紹介にはじまり、実際に近自然森づくりに取り組んでいる日本の林業者たちの奮闘、日本に「近自然森づくり」が根付くために考えるべき日本各地の事情、林務行政や次世代林業者の教育について言及する。

森と社会の関係がどうあったら良いのか、これまでのイメージを再設定することができて、100年後の森に希望のイメージを持てる、福音の書でもあったなと思う。

筆者の林業者への深い敬意と森への愛情が伝わってきます。情報は盛りだくさんですが、大変読みやすく面白いので、「近自然森づくり」を始めて耳にする人にもおススメ!

*近自然森づくりの考え方や実際の管理方法を学びたい方、ボランティアに参加してみたい方は以下のNPO団体の活動に参加されることをおすすめします。

特定非営利活動法人 近自然森づくり協会

(編集部:あかいけ)

<目次>
はじめに 木をつかうこと、森をつくること
序章 森と人の豊かな関係を求めて
1章 近自然森づくりの考え方
2章 森の見方
3章 ロルフのワークショップ
4章 環境と経済が両立する仕組み
5章 森の仕事と教育
6章 日本の針葉樹人工林での近自然森づくり
7章 広葉樹が主役の地域で
8章 まかれる種
9章 地域に根ざす人
終章 「気持ちいい」森で生き延びる
おわりに

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