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山の怪談

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山の怪談

著者:岡本綺堂 他
出版:河出書房新社
価格:1,320円

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山の怪談
 

ページをめくるごとに一歩ずつ怪異に満ちた山に踏み込む

タイトル通り、山にまつわる怪談を次から次に読むことができる。ちょっと前にその名も『山怪』なる本が出てベストセラーになったが、この本は少し時代がかった話が多いのが特徴。著者の名前に「岡本綺堂 他」とあり、目次には小泉八雲、志賀直哉なんて名前も並んでいるので、創作怪談かと思うとそれだけではない。全体は3部構成になっており、それぞれ

 Ⅰ 山の怪異の民俗  Ⅱ 文人・林人の心霊の話  Ⅲ 岳人の怪奇・神秘体験

と題して、全部で20編が収録されている。「Ⅰ 山の怪異の民俗」には柳田国男に始まって民俗学者の名前がずらりと並ぶ。その中に「好日山荘」創業者の書いた天狗論が混じっていたりして興味深い。冒頭に挙げた作家陣は「Ⅱ 文人・林人の心霊の話」に収められているが、いずれも読んでヒヤリとさせてくれる手腕はさすがだ。

ただやはり個人的には、たっぷりぞくぞくさせてもらった「Ⅲ 岳人の怪奇・神秘体験」をお勧めしたい。自ら登山家でもある筆者たちが体験談をもとに書いているので、臨場感がたっぷりなのだ。いずれもはっきりした説明のつかない話ばかりだが、その曖昧な部分が余計に想像力を刺激するのか、やたら背筋が寒くなる。

深田久弥「山の怪談」は終盤のたった1行でぞわっとなる。古川純一「死者」は、読んでいる最中がとにかくこわい。気がつけば自分が深夜の雪山のテントの中にいて、まっすぐ近づいてくる足音に耳を澄ますという体験をさせられることになる。高田直樹「神さんや物の怪や芝ヤンの霊がすんでいる山の中」は、話好きのおじさんのおかしなおしゃべりに付き合っているうちに、不意に深淵を覗き込むことになる。

怪談っぽさこそ乏しいが、名だたる民俗学者たちが、山人や天狗や狢や狐の正体についてああでもないこうでもないと議論を深めている「Ⅰ 山の怪異の民俗」も実は大変面白い。Ⅱ部とⅢ部で山の不思議にたっぷり触れたあとで、一番最後にⅠ部を読むのでもいいかもしれない。怪談といえば夏のものと思いがちだが、この本には冬山の話も結構あって、季節を問わずオススメです。

(編集部:たかしな)

<目次>
I 山の怪異の民俗

入らず山 柳田国男 7
山の怪異 高橋文太郎
含満考ーーバケモノの話 高須 茂
天狗は山人也 西岡一雄
貉の怪異 小池直太郎

II 文人・林人の心霊の話

幽霊滝の伝説 小泉八雲(田部隆次・訳)
兄妹の魂 岡本綺堂
焚火 志賀直哉
天井の怪 平山蘆江
天狗笑い 豊島与志雄
山女 加藤博二
丹沢の七不思議 ハンス・シュトルテ
行ってはいけない土地 工藤美代子

III 岳人の怪奇・神秘体験

山の怪談 深田久弥
岳妖ーー本当にあった話である 上田哲農
岩塔ヶ原 西丸震哉
死者ーー霊魂の歩み 古川純一
山小屋の秋 青柳 健
神さんや物の怪や芝ヤンの霊がすんでいる山の中 高田直樹
縦走路の女 沢野ひとし

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