2010.10.19

秋の実りとツキノワグマ

2006年だったと思うけれど、湖畔の遊歩道を歩いているときに湖から山の方面に道を横切る熊を目撃しました。離れていたし、こちらに向かってくるわけでもなかったので「熊って黒光りしていて綺麗なんだよ」という地元の方の言葉がよぎりました。恐ろしいというよりは、本当に熊が住んでいるんだという実感と野生動物を目にした感動の方が強かったような気がします。
それからというもの、裏磐梯には熊が生息するということを強く意識するようになりました。庭に果樹を植えたくても熊を引き寄せるとのことで近所の人たちは植えていなかったり、とうもろこしも熊に食べられてしまうということで、植えないか、実りの季節になるとネットをかけるなどの対策を講じています。そんなこんなで、熊が生活に密着している裏磐梯。熊だけではなく野生動物といえばカモシカ、キツネ、タヌキ、ウサギなどなど多様な生き物が生息しています。自給用の食べ物を庭や畑でつくるにも、同時の多くの生き物のことを考えながらやらないといけないと言うのが、はじめは大変なところに越してきてしまったと思うこともありました。だって、毎年ほおっておいてもなってくれる果樹が植えられないのは、かなり残念。でも、多くの動物達と共生する感覚というのを実感できる良い場所だなと感じたり、野生動物を何とか付き合う知恵を生活の中で皆培っている場所だなということを感じるようになってきました。

今、裏磐梯は錦秋の季節・・・なはずですが、かなり紅葉は遅れています。しかし、キノコたちがとても元気。食べられるキノコ、ちょっとづつ覚えたりしています。写真の白いキノコは食べれるかどうかは不明。きれいに撮れたので載せてみました。キノコは豊作なのですが、いわゆる、ドングリや果樹などのナリモノ系がやっぱり不作なようです。このあたりはミズナラの多い地域ですが、散歩をしていてもドングリをあまり見かけません。ドングリ不作といえば、今年激増している熊の目撃や事故。要因はドングリ不作、ナラ枯れ病などが言われていますが、熊が増えているという説もあります。
裏磐梯では以前、春先に熊の予防駆除というのをやっていたようです。それが、熊は保護しなければいけないという機運が高まりあるときから予防駆除が出来なくなったそうです。人間が怖いということを知らしめる効果もあったようです。しかし、今年のあまりにも多い目撃情報に、観光シーズンがたけなわの夏に銃器により駆除の知らせが町内の回覧で配られてきて驚きました。夏の狩猟は危険なので行わないのが普通です。それだけ切羽詰った状況ということだったのでしょう。罠などに捕らえられた熊に恐い思いをさせて山に返すという学習放獣というやりかたがありますが、あまり効果がないとも言われていますし、一度里に下りてきて人間がつくっている美味しいものを食べてしまったり、人間を襲った熊は、「ここに来ればうまいものがある」「人間は自分より弱いんだ」ということを学んでしまい、必ずまた里に下りてくるといいます。
夏を過ぎて、全国で熊のニュースを耳にします。ドングリの凶作・豊作は周期的に繰り返されるものだから、その理由だけではないだろうし、本当の原因をきちんと調べるべき時が来ているのではないかと思います。先日、友人から聞いたのですが、ドイツでは猟師さんが地域の熊の生息数を把握していて、適切な管理をしていると聞きました。そして、観光客たちに熊のことを学んでもらったり、熊と人との生活文化を伝えたりということをしているそうです。日本ではまだ、「自然保護」と「狩猟採取」が対立軸にあったりするところも見受けられます。本当に自然と人間が共に生きるというのがどういったことなのかも含めて、さらに手遅れにならないうちに、一人ひとりが考えていかないといけないと実感する今日この頃です。熊のことを考えるということは、同時に森のこと、日本の自然のこと、自分達の暮らしのことを考えることに繫がっていくのだと思います。

 

Comments

熊のニュースを多く見かけるようになりましたね。
これまで斜め読みして、何でだろ、大変だなぁとしか思っていませんでしたが、安珠さんの文を読んで、様々な因果関係があって、人もまた影響を与えているのだと気付かされました。
本当に、裏磐梯は野生動物と生活の距離が近いのですね。今度からニュースなどもきちんと見て、どのような原因や対策があるのか、何が起こっているのか、きちんと考えていこうと思いました。よいきっかけをありがとうございました。

はじめてコメントします。

今年は、熊や猿が人を襲うニュースを頻繁に
見たり、聞いたりしているような気がします。

安珠さんが書かれているように、「自然保護」と
「狩猟採取」が対立しているというのは、
何となく想像がつきます。

でも、方向性が違うからこそ、話し合ったり、
お互いが協力し合うことが大事なのでは?と思います。
難しいとは思いますが。

それにしても、街中に住む人間には、こういった
ニュースはどこか他人ごとに感じられてしまいます。
そういった意識から変えていかなくてはいけないのだと、
そう思いました。

>choroさん

コメントありがとうございます。
考えるきっかけとして受け止めてくださって、嬉しく思います。

色々な方とお話してみても、環境や持続可能な暮らしなどに関心のある方でも、熊のニュースに関しては、流れてくる情報をなんとなく受け取っている感じなんだなと思いました。

そして、熊の出没ニュースは日本海側に多いということ、気づいている人はどれだけいるでしょうか。これも、なぜ多いかということについては中国からやってくる大気汚染ではないかという説もあります。

私たちの暮らしは、世界とつながってしまっているので、いろいろな意味で責任を持ちたいと思う今日この頃です。

>UNOさん

コメントありがとうございます。

>でも、方向性が違うからこそ、話し合ったり、
お互いが協力し合うことが大事なのでは?と思います。

本当に、おっしゃるとおりだと思います。

今の世の中、複雑になりすぎているので、
たくさんの視点を併せて、みんなでこれからのあり方を考える必要があると思うのです。
熊の問題もその1つではないかと思います。

今は、対立のパラダイムから、共生のパラダイムへ変化すべき時代の過渡期にあるのではないかなと思います。

私も、何か遠くで起きている紛争などは、他人事のように捕らえてしまいがちです。毎日、世界中のことを考えていたら、暮らしていけないですが、たまには、遠くで起きていることも自分とどう関係あるのかを考えてみる必要があるなと思いました。

コメントを書く



コメントはブログのオーナーの承認後に表示されます。

 
グローバルメニューです。
プロフィール
RSS
ホーム
Presented by 私の森.jp