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建具の未来を追求して生まれた「ひとつぼキャビン」

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編集部の森製品レポート

建具の未来を追求して生まれた「ひとつぼキャビン」

ひとつぼキャビン

ひとつぼキャビン。それは180cm四方のキューブの上に、ピラミッド状の屋根がついた、まるで積み木の家のようなキュートな小屋。ところがその壁は開閉して、小さいながら「居心地のいいコーナー」をあちこちに生み出す不思議な仕掛けに満ちている。木製建具・ドア・家具の製造から、リフォームや新築まで手がける株式会社サカモト(埼玉県飯能市)が開発した「ひとつぼキャビン」について、取材した。

取材:たかしな

「ひとつぼキャビン」が気になる

ひとつぼキャビンのWebサイト最初に「ひとつぼキャビン」の話を聞いたのは、仕事仲間の紹介だった。ウェブサイトのトップページには、幼稚園の中庭デッキに置かれた小さな木の家、あるいは巨大な積み木の家のようなものがあり、園児たちが周りを駆け回ったり、みんなで何かを覗き込んだり、思い思いに楽しんでいる姿だった。ぼくはそれを見て「うちの屋上にほしい!」と思ったものの、台風が来たらどうするとか、値段とかを聞いてためらってしまっていた。ところがその「ひとつぼキャビン」を使ってお茶会をやると聞いて、にわかに見に行きたくなってしまった。それが今回の取材だ。聞けばこのお茶会には飯能市の市長も来るし、来年飯能市にオープンするというムーミンのテーマパーク「metsä (メッツァ) 」の運営会社の人も来るという。

「ひとつぼキャビン」前史をひもとく

「ひとつぼキャビン」は建具の未来形として構想されたのだという。家や建物に見えるけれど、最初から家や建物にしようと考えていたのではないという。わけがわからない。どうやらいま見るこの姿になるまでに、「前史」と呼ぶべきものがあるらしい。

「ひとつぼキャビン」は株式会社サカモトのプロダクトであり、プロジェクトメンバーを列挙すると[製造・販売](株)サカモト、[プロジェクト監修]京都大学大学院、[設計]MIWA Atelier、[サポート](有)スピナッチということになる。そして、社長の坂本勉さんの話によると、最初の最初は、平成19年にサカモトが"「西川材」エコロジー住空間創造事業"に認定されたところに遡るらしい。

株式会社サカモト代表取締役 坂本 勉さん

株式会社サカモト代表取締役 坂本 勉さん

この事業は、西川材を活性化する目的のもので、当時外材との競争においても、国内のブランド材との競争においても苦戦していた状況をなんとか改善しようとするものだった。認定されたことをきっかけに、サカモトでは、それまで中核事業だった障子・襖・窓・戸といったいわゆる「建具」にとらわれない製品作りに取り組み始めた。

転機が訪れたのは、東京千代田区のワテラス(2013年オープン)だった。

東京千代田区のワテラスに併設される学生用住宅の内装監修、アート監修に関わっていた京都大学大学院の田路貴浩准教授、MIWA Atelierの三輪良恵さんは、ここに国産材の家具を導入することに決めた。その際に、以前から交流のあったサカモトに声をかけ、デスクやベッドを新たにデザインし、西川材の家具が採用されたのだ。スタッフ間では「江戸の西から筏で川を下ってやってきたという西川材の由来にもぴったりだね!」と盛り上がったとか。

「ひとつぼキャビン」の誕生

ワテラスでのコラボレーションがきっかけとなり、次なる展開が訪れる。東京新宿のパークタワー「OZONE」に三輪さんが出展する話が決まり、三輪さんはさっそくサカモトに声をかけた。こうして、西川材とサカモトの建具技術を使った作品づくりのプロジェクトチームが生まれた。チームは2013年3月頃から約1年間、試行錯誤を重ねた。この時点ではあくまでも「建具の未来」を考えていたのだ。

三輪さんがこだわったのは、人がそれぞれにお気に入りのコーナーが見つけられるような、「空間を感じさせる建具」だったという。それはやがて可動式の建具というアイデアとなり、さらには建具が机や椅子や棚や窓に変身する仕掛けにつながり、それらを統合してあたかもひとつの小屋のような姿へと進化した。

ひとつぼキャビンの模型と構造の写真

MIWA Atelierの三輪良恵さん(一級建築士)

MIWA Atelierの三輪良恵さん(一級建築士)

三輪さんが描いたスケッチに対して、田路さんが「壁をなくして柱にしたら」などとアドバイスをして完成形が見えてきた。壁面全体が開閉して、それぞれに違った表情を見せる「ひとつぼキャビン」は、2014年3月「あわいのとびら」展でその全貌をあらわした。「決して近年の"小屋ブーム"に乗ったわけではないんですよ」と申し訳なさそうに三輪さんは笑う。

ちなみに"お気に入りのコーナーを見つける"ということをまさに体現してくれたのは幼稚園児たちだったそうだ。彼らはコーナーにうずくまり、机を囲んでおしゃべりをし、周囲をかけめぐり、かくれんぼをする。大人は人目が気になるのか、なかなかそういう風には関わってくれないらしい。個人で所有すればきっとあちこちをカスタマイズして好きなように使うのだろうけれど。

伝統工芸技術の結晶

見た目のとおり「ひとつぼキャビン」は、極めてシンプルなつくりだが、天井部、扉などそれぞれに工夫や苦労があるという。

京都大学大学院 工学研究科建築学専攻 田路(たじ)貴浩准教授(一級建築士)

京都大学大学院 工学研究科建築学専攻 田路(たじ)貴浩准教授(一級建築士)

「まず天井部分のピラミッドですが、ものが一点に集まってくるというのは日本の工芸品にはあまりありません。構造の材料を組み合わせてつくるのは非常にむずかしいのです」と田路さん。「それぞれ三角の屋根の中に小さな三角のトラスのような構造がありますが、これも無理を言って和紙越しに透けて美しく見えるよう鋭角にお願いしました。我々デザイナーが図面で描くのは簡単ですが、実際につくるサカモトさんは大変なご苦労をされたと聞きます」

天井部分のピラミッド

これを実現したのはサカモトの一級建具技能士たちだ。3人のベテラン職人がいて、中でもこの屋根を仕上げた関口さんは、仲間内で「先生」と親しまれているそうだ。自らの技量を磨くだけでなく、長年にわたって後進を熱心に育ててきたことから、教育者としての活動に対して国土交通大臣から表彰も受けている。坂本社長によると、この屋根の構造は工芸品としても第一級の仕上がりなのだそうだ。仕上がりがシンプルであまりにもさりげないので、気付きにくいが、実はこんなところに技術の結晶がある。

開閉するL型の扉部分にも技術的な工夫が必要だった。扉の蝶番に近い部分は和紙を張った障子とし、直角に曲がった先の部分は木製とした。これは椅子や棚やテーブルが出現するようなさまざまな仕掛けを埋め込んだためだ。その結果、付け根から離れたほうが重くなってしまい、構造上の工夫が必要となった。

開閉するL型の扉部分

しかし、これこそ「仕掛け1:L字扉が開閉する。仕掛け2:さらに椅子などによりL字の中の空間が変化する」という当初からのアイデアを実現するためには、どうしても必要だったらしい。そのおかげで、幼稚園児たちが直感的に関われるような、それぞれに特徴のある個性的な空間を出現させることができた。

まだ売りだしたばかりで、本格的な販売はこれからとのこと。キャンプ場、休憩所、展示スペース、オープンテラスでの利用や、シェアオフィス内のフリーアドレスの机や、キッズスペースへの利用を想定している。今回取材した茶室仕様は、ちょうど千利休の待庵が二畳しかなかったことから連想したもの。スタッフは「富裕層のたしなみとしてニーズがあるのでは」と期待する。

田路准教授は「鉄とコンクリートで構成される近代建築は柱と梁と床があって、構造でできている建物と呼ばれます。それに対して日本の建築は伝統的には建具でできているんです。建具を外すとほとんど天井くらいしか残りません。ひとつぼキャビンは日本の伝統的な考え方を継承していると言えるでしょう」と解説する。

三輪さんはいままさに実験をしているところだと言う。壁や柱にとらわれなくていい、コンパクトなスケール感だからこそ、いろいろな実験に向いているからだ。「もともとは和紙を多用して室内仕様だったものを、テント生地の屋根をつけて屋外仕様に変えてみたり、ある時は茶室にして、ある時は幼稚園に設置するなど、いままで建物ではできなかったアプローチを自由にできます。その結果、人はどう動くだろう、どこで面白がるだろうと、リアルな体験を通して新しい発見があるのではないかと試行錯誤をしています。個人的には、ひとつぼキャビンを核にいろいろな人が関わってくださって、木が持つ魅力をめぐってネットワークが広がっていくことを実感しています」

MIWA Atelierの三輪良恵さん(一級建築士)

茶室仕様にしたひとつぼキャビン 茶会の様子取材した日は、坂本社長の個人宅の庭に茶室仕様にしたひとつぼキャビンを設置。心應寺の住職で飯能市茶道連盟の長澤宗隠氏を招いて茶会を開いた。大久保勝飯能市長や埼玉県議会議員の内沼博史ら約30名招待客が青空の下、地元の西川材の香りに包まれ、お茶を楽しんだ。

 
「ひとつぼキャビン」がウッドデザイン2018受賞!

「ひとつぼキャビンシリーズ」ライフスタイルデザイン部門ウッドデザイン賞2018を受賞しました。

ウッドデザイン賞
「ウッドデザイン賞2018」 受賞作品一覧:建築・空間分野 ライフスタイルデザイン部(PDF/4ページ目)

 

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