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あの人の森は?
伝えたい、森の今:第十一回インタビュー:藤山健一さん

あの人の森は?

伝えたい、森の今

第十一回インタビュー:藤山 健一さん(宮崎県日向市)九州・宮崎で国産「樟脳」づくりを復活させた木材のプロ

聞き手・文:赤堀 楠雄(林材ライター)

工場の製造設備はリサイクル品で手作り

樟脳を作るようになったのは5、6年前からです。国産の木を使ったさまざまな商品開発に取り組んでいる人と出会ったのがきっかけで、その人が「国産の樟脳(しょうのう)を復活させたい」と言うものですから私も興味を持って、じゃあやってみようかと。ところが、作り方がわからない。

樟脳の原料になるクスノキをチップに

樟脳の原料になるクスノキをチップに

調べてみたら、福岡県に1軒だけ樟脳のメーカーが残っていて、そこに何度も通って作り方を教わりました。朝早くに出発して、向こうに6時ごろに着いてコンビニで買ったおにぎりを食べながら工場が始まるのを待つんです。見たい工程が今日は昼からだと言われれば、それまで待ったりしてね。教わったことを帰ってからやってみて、それらしいものができたら、持って行って見てもらって、アドバイスをもらって、また試す。合計7、8回も行ったかな。鹿児島の大隅半島の先っぽに、昔、樟脳をつくっていた人がいると聞いて、そこにも行って教えてもらったりもしました。

材料のクスノキは丸太を市場から仕入れたり、道路開発とかで伐採されたものを買ったりして調達しています。それをチップにして100~120℃くらいで蒸す。蒸して出てきた蒸気を水で冷やすとオイル(精油)を含んだ結晶ができるんです。私も最初は驚いたんですけど、蒸気から固体が採れるんですから不思議ですよね。寒い時だと、シャーベットみたいになって水槽に浮くんですよ。それを網ですくって1日置いて、オイルが落ちたものを遠心分離機にかけると乾いた粉状のものができるんです。それが樟脳。原木(原料の丸太)の重さに対してだいたい2%くらいの割合で採れます。今は1年間に1tくらい生産していますから、原木を50tくらい使っていることになりますね。

遠心分離機

製造設備は、すべてリサイクル品で作ったんですよ。地元に鉄工屋や土建屋をやっている友だちがいて、いろいろ教えてもらいながら工夫して作りました。遠心分離機なんかは、普通の洗濯機ですよ。それに200ボルトのモーターを付けて毎分800回転くらい回るようにしてあります。

蒸気を冷やすのに最初は水道水を使ったんですが、それだと塩素が付いてうまくない。なので、今は地下水を使っています。保健所で検査してもらって飲める水だということを確かめてね。チップを蒸すのも廃材を燃やして熱源にしているし、やっていることはシンプルなんですよ。

 

面白いのは広葉樹。スギの大量生産ではつまらない

私は高校を卒業してからずっと木材に携わっています。その頃、父親がインドネシアで製材工場をやっていて、現地で手伝いをするようになったのが木材に関わるようになった最初です。昭和50年代の初めですね。黒檀やチークといった木を仕入れたり、製材したりしたんですが、まあいろいろ大変なこともありました。現地人から嫌がらせにあったりもしましたしね。そのうちに父親がオートバイ事故で亡くなってしまって、それをきっかけに向こうの商売をたたみ、宮崎に帰って製材をやるようになったんです。突き板をやったり、化粧合板をつくったりもして、その頃は主に広葉樹を扱っていました。樹種はさまざまでケヤキやサクラなど、30種類くらいを扱っていたんですよ。北海道にも毎月買い付けに行きましたしね。

今は広葉樹の山がなくなってしまいましたから、宮崎と言えばスギばかりですが、扱っていて本当に面白いのは広葉樹だと思いますね。例えばケヤキの丸太を入札で仕入れる場合、入札額を一斉に開けてみたら、赤堀さんは10万円付けたのに、オレは5万円、でも他の人は20万円なんてことがある。その人は「ちょっと高かったかなあ」なんて言いながら仕入れても、それで製品を作ればそれなりに売れて商売になったんですよ。遊び心があると言うのかなあ。でもスギだったらみんなが相場を見ているから、入札額は1,000円も変わりません。それじゃあつまらない。

スギの製材も大量生産方式で製品をバンバン作っていくでしょ。まるでトコロテンみたいに。丸太を念入りに眺め、個性を見抜いて鋸を入れる木取りの技が必要なくなってしまった。去年までは私もスギやヒノキの一般建築材をつくる製材をやっていたんですが、もうそっちの方はいいやと、今年になってから大幅に縮小しました。そうして普通の工場がやらない仕事をやろうと。良い木だなと思った木を仕入れて、それを思うように製材して、それを買ってくれる人がいればいいやってね。そういうのは木心がないとやれません。そういう製材の技を何とか継承していきたいとは思っているんですけどね。

 

これからはオイルの商品化に力を入れたい

樟脳(しょうのう)

そんな感じで仕事をしているので、樟脳の商売が化けてくれないかなとは思っているんです。用途も含めてもう少し広がればねえ。もっとも樟脳の方は確立された用途があるんです。衣服の虫除けになるし、化学合成の薬品と違って自然素材そのものだから安心して使えます。問題は副産物のオイルで、これを何とかしたい。オイルにも樟脳が少しは含まれていて、石鹸や化粧品をつくったり、いろいろやってるんですが、もうひとつ化けてくれない。

樟脳にいろいろな効能があるのは確かですから、それを含んだオイルもいろいろな用途に使えるとは思っているんですがねえ。実際、クスのチップを蒸す日には藪蚊が出ませんし、工場の近くに魚市場があるので、以前は夏場になるとハエがたくさんいたんですが、樟脳を作るようになってから、ぱったりといなくなった。ゴキブリも出なくなったんですよ。

今はこうした樟脳の特性を生かして、オイルを利用した商品の開発を何とか進めたいと思っています。何しろ製造に際してオイルの方も樟脳と同じ量ができますから、これを何とか使えるようにしたい。インターネットの販売サイトを作ってくれたりと、協力してくれている人たちも東京にいるので、彼らともいろいろ相談しながらやっていこうと思っています。

天然樟脳、樟脳油入りシリカゲル、クスノキ油(樟脳油)入り石鹸などがある。 天然樟脳、樟脳油入りシリカゲル、クスノキ油(樟脳油)入り石鹸などがある。
 

プロフィール

藤山 健一|ふじやま・けんいち

1960年生まれ。宮崎県日向市の木材加工業者「フジヤマスライサー」社長。高校卒業以来、現在に至るまで家業の木材業に従事。父親がインドネシアで経営していた製材工場を現地で手伝うなど、同国での経験も豊富。黒檀やチークといった南方材のほか、国産のさまざまな広葉樹の特性に通じ、1本1本の丸太の個性に即して製材を行い、利用するのがモットー。木について語り始めると話は尽きず、必ず出てくるフレーズが「やっぱり木が好きですから」。2006年から地元産のクスノキを原料とした樟脳の製造をスタート。現在、国内で事業として樟脳を製造しているのは同社を含め2社だけとされる。

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藤山 健一|ふじやま・けんいち
 
 

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