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あの人の森は?
伝えたい、森の今:第三回インタビュー:木楽里 井上 淳治 氏

あの人の森は?

伝えたい、森の今

第三回インタビュー:木楽里 井上 淳治 氏 「本当の木の良さを伝える林業家の木工房」

聞き手・文:赤堀 楠雄(林材ライター)

「間伐材」が大ブーム。でもそれだけでは林業の未来はない

最近は間伐材ならすべてエコという風潮がありますよね。抜き伐りして出てきた木なら何でも間伐材だといって、使おう使おうとアピールする。これ、ちょっとまずいと思うんです。いわゆる「間伐材」という言葉のイメージが当てはまるのは、一辺が10.5cmや12cmといった寸法の柱が採れないような細い木くらいまででしょう。それなのに何でもかんでも「間伐材だから使おう」では、その木がどんな品質なのかという評価が二の次になってしまいます。

私たち林業家の立場からすれば、やはり1本1本の木の良し悪しをよく見てほしいし、良いものの価値もわかってほしいんです。例えば、最近は若い人の大多数が節の有無にこだわらなくなっていると言われますが、私はこだわり方を知らないだけなんだと思います。節のある木とない木、あるいは若い木と樹齢が70〜80年とか100年になるような木、その違いをわかってもらいたい。そうやって木の美しさや面白さといった品質本位の扱いがされるようにならないと、木の文化が廃れてしまいますし、歴史のある林業地は存在価値がなくなってしまいます。

 

林業(材料)+木工房(場)で新しいビジネスを創出

木楽里を始めたのにもそんな思いがあって、一般の方に木の良さをPRしようというのが始まりです。あと、プロの買い手というのは、ケチを付けて買いたたこうとするので、もっと木の価値を引き出して売りたいというのもありました。もうひとつは経営上のことで、林業経営だけで食べていけたのは、木材が盛んに売れた昭和30年代から40年代の高度経済成長期だけなんですよ。いまは林業以外にも収入がないと、林業を続けられなくなるかもしれません。では何をすればいいのか。手っ取り早いのは勤め人になることですが、私は勤めをしながら山を管理する自信はありませんでした。だったら木を生かしたことで何かできないかということで、木工をやろうと考えたんです。

最初は木工品を自分で製造販売することを考えました。でも、よく観光地なんかで1個500円くらいで売られているものがありますが、あれの原価を考えると、いったい何個売れば商売になるのか、気が遠くなりますよね。これはダメだなと。ただ、私自身、もともと日用品程度のものはよく作っていて、倉庫で木工をやっていると、「材料を売ってくれないか」という人がよく来たんです。だから木工をやりたいという人はいるのかなと感じていて、だったら、材料と場の提供が商売になるかもしれないと思い始めたんです。

 

当時、那須塩原に自分がやろうとしていることはこれだと思えるような工房がありました。道具も材料もちゃんとしていて、レベルの高いものがつくられている。そこの社長さんに、何が一番大変なのかと聞いたら「材料の調達だ」と言うんですよ。何だ、オレにあるのは材料だけなのに、これだけやってる人がそれに一番苦労してるのかと。だったら何とかなるかもしれないぞ。そう思って、材料と木工の場を提供する体験型の工房をスタートすることにしたわけです。

材料選びから完成まで、オリジナル家具づくりを完全サポート

木楽里は1997年7月にオープンしました。今年で12年になります。セールスポイントは本物の無垢の材料を使ったレベルの高い木工ができることです。機械は一通りそろっていますし、スタッフがアドバイスするので難しい加工もできますから、大型のダイニングテーブルや食器棚、キャビネットといった本格的な木製家具をつくることができます。コストは材料費や工房の使用料で、クオリティの高い自分だけの家具を木工作家に頼むよりは安くつくることができます。材料には、節の有無や程度、どのくらいの幅があるかといった品質に応じて、これなら森の再生産ができるという価格を付けています。

木楽里のシステムでは、まずどんなものを作りたいかの打ち合せをして、予算に合わせて材料や作り方を決めます。木材はすべてウチの山から伐り出したスギやヒノキで、倉庫にストックしてある中から気に入ったものを選んでいただきます。1本の木から採れた材でテーブルをつくったり、引き出しの表板の木目を合わせたりといったことも、もちろんできます。材料が決まったら私たちの方で必要な長さに切りそろえるといった下準備をして、ホゾを切ったり、組み手を加工したりといった組み立てはご自分でやっていただきます。スタッフが付いていますから、経験のない方でも大丈夫ですよ。制作途中のものは工房でお預かりしますから、都合に合わせて通いながらつくっていただくことができます。

 

家族を想って木を選び、家具をつくることが絆を深める

作品で一番多いのは本棚やキャビネットなどの収納関係ですが、最近はお子さんの入学に合わせて学習机をつくる人も増えています。学習机の場合、幅が1mくらいで引き出しが2つ付いた一般的な形のものなら4日くらいでできます。費用は材料にもよりますが、5万円から10万円くらい。ダイニングテーブルなら材料費が6〜7万円くらいというのが多いですね。引き出しがないものなら2、3日でできますよ。

子どもの学習机をつくるというお客さんは、家族の仲がいいんですよね。いよいよ完成という日には、だいたい家族みんなでいらっしゃいます。あと、上の子の学習机に使ったのと同じ木から採れた板を下の子のときにも使いたいからと、その材を予約しているお客さんもいます。そうやって木に思い入れを持ってもらって、家族で喜んでもらえるというのは、うれしいですよね。それとデザインは使う人自身が考えるのが一番いいデザインになると感じます。完成して家に据え付けた写真を送ってもらうと、工房で撮った完成写真よりもずっといい。ここで使うんだというのを前提にして決まった形っていうのは、やっぱりいいんですよね。

本当にやりたいのは、かけたいだけの手間をかけ、育てたい木を育てる林業

木の真価を伝えたくてはじめた工房を運営しながら、それでも私が本当にやりたいのは、価格がこうだからとか、こうやらなくちゃ効率が悪いからとかでなくて、自分はこれがいいんだ、こういう木を育てたいんだという林業なんです。それ、楽しいと思いませんか。枝打ちをやるのだって、1本に1日かけてもいいんだから。楽しいだろうなあ。そんなの経済的に合わないだろうって言われたって、いいんだよ、やりたくてやってんだからって。そういう山仕事をしたい。

でもね、ウチの山を担当するスタッフには「どのくらい草が刈れたのか?」とか「何本間伐したんだ?」とかって、聞いてしまうんです。自分がやりたいこととは違うのに。だから、いつか自由にやれる山を与えてやりたい。効率は考えなくていいから、休みの日に好きにしてごらんという山を。
ウチで働く人間には、木を育てて、その成長を見る楽しさを味わってもらいたいですから。

プロフィール

井上 淳治|いのうえ じゅんじ

1960年3月8日生まれ。江戸時代から優良材の産地として知られる西川林業地(埼玉県の入間川、高麗川、越辺川の流域)の林業経営者(10代目)。経営面積は80ha。1982年3月、東京農業大学農学部林学科卒業後、同大学造林学研究室研究生、奈良県桜井市の製材工場での製材見習いを経て1984年4月から家業の林業に従事。1997年7月、きまま工房「木楽里」を開設、現在に至る。現在、全国林業研究グループ連絡協議会副会長、埼玉県森林協会副会長(林業研究部会部会長)、NPO法人西川・森の市場代表理事。

井上 淳治|いのうえ じゅんじ
 
 

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