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ポスト3.11と森
被災地で「木」が育む希望の芽
事例レポート05 陸前高田の伝統食「椿油」で仕事をつくる

ポスト3.11と森

ポスト3.11と森:被災地で「木」が育む希望の芽

陸前高田の椿

事例レポート05 陸前高田の伝統食「椿油」で仕事をつくる

2012年秋、陸前高田市で椿油をつくる工房「椿のみち」が開設され、ツバキの実から油を搾った食用「生しぼり椿油」の販売がスタートしました。もともと椿油は気仙地方の伝統食。昔から、自生するツバキの実から油をとって、食用はもちろん、髪や肌につけたり気仙大工の刃物を磨いたりと、暮らしに欠かせないものでした。津波に負けず耐え残ったツバキを利用して、搾油という仕事をつくり、被災した方や、地元のフルタイムでは働けない方の雇用を確保する……。その実現は、二人の女性の想いの結実でした。

残されたものを継承して、新たな仕事をつくりたい!

陸前高田で長年、障がい者支援施設の仕事に携わってきた武田景子さんは、東日本大震災で活動拠点をなくした障がい者と保護者のために、作業所を立ち上げようと奔走していました。「作業所を立ち上げてもどうやって仕事をつくればいいか」と悩みながら街を歩いていたとき、津波の塩害で枯れた木の間からポッとツバキの花が咲いているのを目にして、地元に古くからあった椿油のことを思い出しました。「昔からこの土地に根付いていたものをもう一度見直して、利用者さんの仕事にできないかな」と。

武田景子さん

ネパリ・バザーロ製油工房「椿のみち」工房長 武田景子さん

ちょうどその頃、横浜から復興支援のために陸前高田へ来ていた、ネパリ・バザーロの土屋春代さんと出会い、武田さんは、陸前高田に残されたものを何とか継承して仕事にしたいこと、その仕事を作業所の利用者さんに担ってもらいたいことなど熱い想いを切々と話しました。実は、土屋さんは、20年以上前から、ネパール住民の「教育も大切だが、生きて行くための仕事が欲しい」という声に応えて現地の人々とのモノづくり(衣服や紅茶など)、フェアトレードを行ってきた「仕事づくり」の達人。今回も「やりましょう!」と即答されたそうです。
「地元にあるもので産業を起こそう」「陸前高田を椿の里にしよう」と意気投合し、そこから、原料の調達、搾油工程のデザインなど、具体化を急ピッチで進めたのは土屋さんでした。

ネパリ・バザーロの土屋春代さん

ネパリ・バザーロ代表 土屋春代さん

ところが、工房の開所を目前に、諸事情によって障がい者支援施設というかたちでのスタートが難しくなり、最終的には、障がいのある方ではなく、被災した主婦の方、さまざまな事情があってフルタイムでは働けない方などがここで働くことになりました。当初は障がい者支援を目的としていた武田さんも、「土屋さんから教えてもらったネパールで定職を得て輝いている女性たちと同じように、この工房で働く女性たちが仕事でいきいきと変わっていくのを見て、障がい者とか健常者とかにかかわらず、仕事をつくるということの大切さを改めて知りました」と言います。

 

植樹から出荷まで。スローな工程で丁寧につくる

椿の実を、殻と中身に選別する「椿のみち」のスタッフ

椿の実を、殻と中身に選別

専用の器械でじっくりと油を絞る「椿のみち」のスタッフ

専用の器械でじっくりと油を絞る

椿油をつくる工房「椿のみち」では、収穫したツバキの実は、まず殻と中身の選別を手作業で行います。手間はかかっても丁寧な選別を行うことで、より優れた品質が確保できるといいます。厳選された「実」に圧力をかけて油を搾る工程も、ゆっくりじっくり行われます。
「障害のある方が、自分にできることを、手を使って働く喜びを味わえるように作業工程ができています。採算は度外視で利用者の人たちのやりがいを考えてデザインしたので、健常な方が作業をすると手が掛かり過ぎてしまうんです。でも結果的には、ゆっくり丁寧につくるおかげで、とても良い油が出来ています」と、土屋さん。

 

2013年から、ボランティアの力を借りてツバキの植樹も行い、専門家のアドバイスに従って丹精込めて育てています。20年後の「生しぼり椿油」の原料になるようにと。

ボランティアの方が植樹した椿の苗

丁寧に搾られた椿油は癖がなく、オレイン酸も豊富でとても美味しいと、少しずつ評判になり、いくつかのお店に並ぶようになりました。さらに雇用を増やし、長期にわたって仕事を継続できるようにと、土屋さん率いるネパリ・バザーロでは、椿油を原料とする化粧品シリーズも開発、2013年秋には発売に漕ぎつけました。ゆっくりと陸前高田で搾られた椿油が全国へ広がっています。

(左)食用の椿油「生しぼり椿油」(右)椿油を原料とする化粧品「クーネ」

今では工程管理も確立しているし、仕事に熟練した人もいる。「これからは健常者だけでなく、障がい者や自閉症の人、引きこもりの人たちにも利用してもらって、みんなが一緒に働けて、誰でも遊びに来られるような工房になればいい」と、武田さんは今後への想いを語りました。

工房「椿のみち」のみなさん

 
武田景子さん

武田景子さん

ネパリ・バザーロ製油工房「椿のみち」工房長

障がい者福祉の仕事をしていて、震災支援を受けるなかで土屋氏に出会う。津波に負けずに花を咲かせた椿で、障がい者と共に働けるものを創りたいという願いが、この工房になった。工房で働く人は、障がい者から家庭事情で一般就労が難しい人に変わったが、ここで働ける喜びをかみしめながら、誰でも集いやすい工房を目指す。

 
土屋春代

土屋春代さん

ネパリ・バザーロ代表

中学校時代に知ったネパールの子どもたちの厳しい状況とその20数年後に聞いた状況が殆ど変わっていないことに衝撃を受け、教育支援活動を始めた。しかし横たわる深刻な貧困問題に直面し、仕事の機会創出のため1992年ネパリ・バザーロを設立した。震災後は東北被災各地を走り回り、支援を続け、今に至る。

 

ネパール大地震 ご支援のお願い

 

土屋さんが代表をつとめるネパリ・バザーロでは、NPO法人ベルダレルネーヨを通してネパール大地震の被災者支援にも取り組んでいます。土屋さんたちの活動によって、仕事を得て貧困から一歩を踏み出したネパールの人たちもまた、多くを失いました。寄付先のWebサイト「Verda」ではこのページでご紹介している椿油商品はもちろん、ネパールの人たちの手によって作られた素敵な製品が販売されています。どうぞご支援ください。私の森.jp編集部ではシリンゲ村のコーヒーを購入しています(とっても美味しい!)

(記事掲載月:2015年7月)

 

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