私の森.jp 森と暮らしと心をつなぐ

ブレッドクラムメニューです。
ホーム
おもしろ森学
編集部の本棚
きのこの下には死体が眠る!?-菌糸が織りなす不思議な世界

おもしろ森学

編集部の本棚

きのこの下には死体が眠る!?-菌糸が織りなす不思議な世界

著者:吹春俊光
出版:技術評論社
価格:1,580円+税

amazonで買う

文学は地球を想像する-エコクリティシズムの挑戦
 

きのこ愛にあふれた著者(博物館学芸員)が誘うミステリアスなきのこの世界 
注)推理小説ではありません、科学書です。

森を歩けばどこかで必ず出会うきのこ、その本体は地面の表面にも朽木にも腐植にも、森の至る所に張り巡らされる菌糸、ひょっとしたら死体にも・・・
下手なミステリーよりもずっとミステリアスなきのこの世界、ちょっと奇妙な本書のタイトルは、特段きのこに関心のない人にも手に取ってもらうため、ページをめくってもらうための工夫に違いありませんが、冒頭で展開される、動物の死体や糞尿が分解した後に出てくるきのこ、アンモニア菌の話は文句無しにおもしろい!きのこ好きでなくても引き込まれること間違いなし。
その特殊なきのこが日本人研究者(著者の師匠、相良直彦博士)によって見出されていくストーリー、そしてアンモニア菌を探求していく過程で、ナガエノスギタケ(別名モグラノセッチンタケ)の長い柄の真意が明らかになっていく。これぞまさしくミステリー!
ただし、

千年もの昔から、日本人は毒きのこに心配しながら、野生の美味な食用きのこを利用していたのである。この状況は今でも変わらない。

とのこと、新鮮なきのこを目の前にした日本人の知りたいことはただ一つ、「このきのこは食べられる?やっぱり毒きのこ?」これ以外にありません。

私は自分で採ったきのこに舌鼓を打ったことも、中毒に苦しんだこともありません。そのきのこが食べられるか否か、残念ながら口をつぐむことしかできませんでした。ところが本書できのこの毒についてたっぷり学んでからは、先の質問が発せられた時、きっぱりとこう答えられるようになりました。

(毒きのこは毒々しい色をしている、毒きのこでもナスと煮ると中毒しない、などなど)迷信はすべて間違いである/毒きのこの見分け方に王道なし/実はヒトが食べて初めて毒とわかるのである。

もっとも、きのこ毒についての蘊蓄がたっぷり紹介されていても、モグラノセッチングタケの逸話がいかにミステリアスでも、森好きの皆さんなら、毒やモグラノセッチンタケについての箇所は後回しにして、真っ先に開くのは「きのこがつくる森」の部分かもしれません。

緑色に見える陸上の植物の大部分が、根の部分で菌類と共生し、菌類にその生存を依存して生きているのである。

菌類あっての植物、菌類よ、ありがとう。「きのこがつくる森」の項では、植物と菌類との間で結ばれた共生関係の、壮大で複雑な仕組みが詳しく丁寧に解説されています。

きのこをつくる菌類の代表である担子菌類は、森の有機物(樹幹、枝等)の主要構成要素であり、分解の難しいリグニンを単独で無機化できる地球上唯一の生物である。森にきのこがいるおかげで、落葉、落枝、倒木などが速やかに分解される。もし菌類が森にいなかったら、森の中は倒木や落枝に埋め尽くされ大変なことになるだろう。

生態系は、生産者(植物)と消費者(動物)だけでな回らない、菌類など分解者がいなければそのシステムは循環しないのですね。生態系における消費者である我々は、生産者である植物の恩恵を感じる場面は多くありますが、分解者に感謝することは少ないのではないでしょうか。共生関係を結んで植物を繁栄させ、倒木や落ち葉を分解し、その上(一部は)美味しく食べられる菌類、本当に偉大です。
偉大な菌類の恩恵を知り、そこここに菌類が息づいていることを感じとることができれば、いつもの森がきっと違って見えることでしょう。

(編集部:うえはら)

口絵
<目次>
はじめに

第1章 きのこの下に眠るもの
 1−1  ニュージーランドの森に死体を置く
 1−2 死体跡に生えるきのこ? アンモニア菌発見史①
 1−3 死体跡に生えるきのこ? アンモニア菌発見史②
 コラム ナガエノスギタケ発掘記

第2章 きのことは何か?
 2−1  きのこはなんの仲間?
 2−2 きのこの体のつくり
 2−3 きのこの分類ときのこの形
 2−4 きのこの暮らしと生える場所 腐生と菌根共生
 2−5 きのこの寿命
 2−6 きのこの登場
 コラム キノコではない変形菌類

第3章 きのこの毒
 3-1 きのこの毒の不思議
 3−2 毒きのこ、いろいろ
 3−3 スギヒラタケによる中毒
 3−4 麻薬成分を含む怪しいきのこ
 3−5 毒きのこの迷信はどこまで本当か?
 コラム きのこ嫌いときのこ好き民族

第4章 きのこの繁殖戦略
 4−1 胞子を飛ばす工夫
 4-2 胞子を広げる工夫
 4-3 きのこの生活環
 コラム フェアリーリング

第5章 きのこがつくる森
 5−1 菌根という暮らし方
 5-2 里山の成立とマツタケの発生
 5-3 ヒマラヤとつながる日本の森
 5-4 居候植物のひみつ
 コラム 八百屋さんに並ぶマツタケの分布

第6章 きのこと環境
 6−1 きのこの分布問題①
 6-2 きのこの分布問題②
 6-3 きのこの受難ー外来種問題
 6-4 地球温暖化ときのこ
 コラム イモタケの分布

第7章 きのこを研究する
 7−1 顕微鏡で胞子を見る
 7-2 新種記載への道①
 7-3 新種記載への道②
 7-4 腹菌類はどこへ行った?
 7-5 きのこの生態を研究する
 7-6 アマチュアの活躍

おわりに
本書に登場するおもなきのこ(真菌類)
参考文献

ページの先頭へ

グローバルメニューです。
ニュース&トピックス
森へ行こう!
あの人の森は?
おもしろ森学
ポスト3.11と森
暮らしと森製品!
サポートメニューです。
私の森.jpについて
お問い合わせ
サイトマップ
コンテンツメニューです。
ニュース&トピックス
森へ行こう!
あの人の森は?
おもしろ森学
ポスト3.11と森
暮らしと森製品!
私の森.jpの歩き方
森のクイズ
私の森.jp 写真部
私の森ネットワーク
ポリシーメニューです。
サイトのご利用について
プライバシーポリシー