森遊びの新メニュー? ふしぎな地衣類観察へのご招待。
紅葉の秋を過ぎて、落葉広葉樹がすっかり葉を落としてしまう冬。なんとなく、森に出かけてもさびしいしなあ、なんて思っていませんか? でも木々が葉を落とし、光が地面まで明るく照らすこの季節だからこその楽しみ方があります。葉が繁る季節には観察がむずかしいものが良く見えるようになるので、バードウォッチングにも最適ですが、冬も枯れることがない地衣類の観察にもベストシーズンなのです。
「地衣類って何?」という人も多いでしょうが、知らず知らずに目にしているはず。岩の上や樹皮にパズルみたいな模様を描いていたり、木の枝に糸のような塊がまとわりついていたりする、あれが地衣類です。ウメノキゴケ、ハナゴケなんて名前がついていますがコケではありません。おまけに単一の生物でもないふしぎな存在。菌類の仲間で、緑藻やシアノバクテリアと共生して、菌類は藻類に安定した生活環境と水や有機物を与え、藻類は光合成でつくる栄養を菌類に提供しているのだとか。
そんなふしぎな地衣類についての解説も興味深いものの、この本のもう一つの魅力は著者が撮影した豊富な写真にあります。アップの写真のちょっとアヤシい姿、全体を写した写真のユニークな模様、意外にもバラエティに富んだ色彩感など刺激的。絵やデザインに興味がある人にとってはネタの宝庫に見えるかも知れません。地衣類を知っていた人にはよりディープな情報を、いままで気に留めずにいた人には森遊びの新しい楽しみ方を教えてくれる一冊です。新書サイズなので森へのお出かけのお供にどうぞ!
(編集部:たかしな)