誰をもなごませる魔法の絵本。
子ども向けの絵本とあなどることなかれ。絵本『日本の妖怪大図鑑』は、〈1〉家の妖怪、〈2〉山の妖怪、〈3〉海の妖怪の3冊からなるシリーズで、全140もの妖怪がずらり並んでいて、それぞれの妖怪の出没地や、危険度まで網羅! しかも監修には国立歴史民俗博物館教授の常光徹さん、本文は妖怪学なら知らぬ人がいない小松和彦さん、そしてカラフルで楽しく迫力のある絵は広瀬克也さんと、大変に贅沢なつくりなのだ。
そう。これ一冊あれば、誰でもなごんでしまう魔法の絵本といっても過言ではない。子ども相手に一緒に絵を眺めながら読んであげるのはもちろんだが、オトナたちこそ手に取って眺めて欲しい。日本や世界の森林や、林業の行く末、政策を論じるようなオトナのまじめな会議室にこの絵本があれば、思わず笑いがこぼれ、子どものころの記憶や、自分の故郷の妖怪の話に花が咲いて、最高のアイスブレイクになるはず。
たとえば危険度の欄を眺めるとこんな感じ。大きな木の上から突然襲って来る「つるべおろし」の危険度は「人をおそって食う」とある。大変におそろしい。すぐわきの「ベトベトさん」は『ゲゲゲの女房』でもしばしば名前を聞いた妖怪。危険度は「足音をさせる」。つまりあまりこわくない。ページをめくると「おくりおおかみ」なんて妖怪がいる。え?それは妖怪なのか?と思いながら解説を読むと、「人のあとをついてきて家までおくってくれます」とある。危険度は「家までおくってくれる」となっている。世間でいう「おくりおおかみ」よりよっぽど安全だ。「やまおとこ」にいたっては危険度の欄に「仕事をてつだうこともある」とあって、むしろ人のためになることをする妖怪だとわかる。
この一冊を何人かで囲んで眺めて、わいわいいいながら眺めると楽しそうだということがおわかりいただけただろうか。この本は「山の妖怪」ということで、山にでる妖怪,大きな妖怪,きまった日に出る妖怪、木にやどる妖怪、おに、てんぐ、動物の姿をした妖怪、里にでる妖怪が紹介されている。日本の森lover必携の一冊として、ぜひお堅い会議室などに持ち込んで、みんなの頭をほぐすのに活用してください。
(編集部:たかしな)