森に限らず、教育と学びについてのヒントも満載!
抜き書きしたい名言がぎっしりの一冊でした。日本でも通称「日本型フォレスター」と呼ばれる森林総合監理士という制度が始まっていますが、「紆余曲折があり、当初の構想ではドイツ初めヨーロッパ型の幅広い責任と権限を持つフォレスターを目指していたものが、そうならなかった」とのことです(p10)。
では本場のフォレスターとはどんな仕事ぶりなんだろう?ということで、この本ではスイスのフォレスターについて、その仕事ぶり、教育システム、それを支えるスイスの教育観などを幅広く紹介し、さらにはスイスのフォレスター(やその卵たち)が来日して日本の林業家たちと交流し、教室や研修を開く様子をレポートしています。
「経済か、環境か」の二者択一ではなく、「経済も、環境も」めざすフォレスターのロルフさんは「森の資産価値が高ければそれを持続させ、低いのならば価値を上げるのがフォレスターの役目。森を傷つけるなんてとんでもない」と明言します。ほれぼれするでしょう?(p35)こういう名言がばんばん出てきます。「スイスのフォレスターのあり方はオーケストラの指揮者のようだ」(p134)、「森づくりが自然から離れれば離れるほどやるべき仕事が増えて、結果コストがかかる」(p165)、「森に何か言いたかったら、森に従え」(p237)、ぜひ本を読んでそのフレーズのすごみを感じてほしいので詳しくは説明しませんがいっぱい刺激を受けること間違いなし。
スイスの林業も、いまなお模索しながらいい方向を目指している状況だそうですが、「日本でも取り入れると良さそう!」と感じる具体例がいっぱいあり、日本の森の未来を考える人にとって、読めば勇気づけられる話が満載です。
でもこの本の魅力は、そこにとどまりません。実は人を育てるというのはどういうことか、人が自主的に学ぶにはどういう環境をつくればいいかということについて考えさせられることがたくさんあります。それは林業に限った話ではなく、あらゆるジャンルでの教育や学びにつながる話なので、特に身近に子どもがいる人や、会社などで教える立場にある人にとってはヒントがいっぱいです。特に7章「フォレスターの卵に学ぶ」に出てくる「職業訓練のためのチェックリスト」は目から鱗でした。
森好きさんにも、人好きさんにもオススメします!
(編集部:たかしな)