故きを温ねて新しきを知る、縄文時代の植物利用
“縄文時代”と聞いて、何を思い浮かべますか?「“縄文土器”や“竪穴式住居”など、学校の授業で習った単語は浮かんだけれど、他はあまり印象がない・・・」という方も多いかもしれません。わたし自身、タイトルを見て「たしかに、縄文時代の植物利用ってどんな風だったんだろう?」と興味を惹かれ、気軽に読み始めました。が、予想をはるかに上回るディープで充実した内容です。
この一冊を読めば、お住まいの地域でいちばん縄文に詳しい人物に躍り出ること請け合い(植物分野に限る)!
国立歴史民俗博物館が行った開発型共同研究「縄文時代の人と植物の研究史」より明らかになった、最新の研究成果がまとめられている本書。
考古学、植物学、民俗学、年代学のエキスパートが一丸となり、遺跡発掘調査で出土したあらゆるものを糸口に、「縄文人の植物栽培」「縄文人の森林利用」などの実態を考察しています。単に研究結果を述べるにとどまらず、調査手法やその考察を含む研究の詳細までが、文章、写真、グラフなどで丁寧に説明されていて、まるで自分も一緒に縄文時代の植物利用のあり方を解き明かしているような気分に。研究結果からみえた「自然の中に身を置き、知恵を用いて柔軟に暮らしを立てる」縄文人のスタイルは、今のわたしたちの生活を見直すヒントにもなるかもしれません。
「東北・関東・北陸地方の縄文人はクリを好み、西日本の縄文人はドングリを好む」「狩猟採取民と思われていた縄文人は、ダイズを育て、森林資源を管理していた」など、知るとちょっと嬉しい知識も満載。
夜の長いこの季節、縄文時代の植物の世界をすこし覗いてみてはいかがでしょうか?
(編集部:うえだ)