世界から注目される「森林浴」は、科学の未開地を切り拓くのかもしれない。
「森林浴」という言葉、「Shinrin—yoku」とそのままの日本語が米国で使われているのをご存知でしょうか? 「森林浴」は日本発祥の研究で、長きにわたるデータの蓄積もあることから、ナショナルジオグラフィックなど、「自然セラピー」のひとつとして海外のメディアでも取り上げられるようになりました。
本書は、これまで「実感はあるけれど因果関係を証明するものはない」とされ、民間療法の範疇で語られがちであった「自然セラピー」を科学的に検証し、データに基づいて広く社会におけるメンタルヘルスの向上・管理などへの活用を促す研究解説書です。
解説は、科学が苦手な人でもわかりやすく平易な文章で綴られいて、研究書でありながら、このデータをどんな人々に利用してほしいのか、伝えたい相手に向けた編集が嬉しい。 多種多様な実験事例は興味深く、韓国・中国・フィンランド・米国など世界の自然セラピー研究や、全国の森林セラピーロードの紹介もあります。
さらに大変興味深いのは、実験データが示す個人差の謎に向き合い「ひとそれぞれの感じ方」から「ひとそれぞれの生体調整効果」へと発想を転換し、それを証明したこと。血圧の高い人は低く、低い人は高くなるというように、心地よい自然環境には生体機能のバランスを正しく調整する力があるようです
プレゼントには向かないかもしれないけれど、例えば自然・森をフィールドにして健康・メンタルヘルス向上のプロジェクトに取り組んでいる人たちが、プレゼン資料に利用したくなるような、有益な情報が満載です。編集部おススメの一冊。
(編集部:あかいけ)