ここに流れる時間をともに過ごしたくなる、そんな写真集。
見ていて涙がにじんでくる。こんなまっすぐな、こんなあけっぴろげな、こんなさえぎりもののない表情を、人間はできるのだ。この写真集は、財団法人キープ協会が2002年に清里で立ち上げた「キープ森のようちえん」に参加した子どもたちの様子を記録したものだが、単なる記録に終わっていない。このコンパクトな本のモノクロの写真たちはとても饒舌に語りかけてきて心を強く揺さぶる。
写真の中の子どもたちは木に登り、虫をつかまえ、急斜面をよじ登り、もう歩けないと泣き、喧嘩をし、草原を走り、森の陽だまりに佇む。この写真集を見た子どもはきっと「ここに行きたい!」と言うだろう。子どもを持つ親は「うちの子をここに連れていきたい!」と思うだろう。そしてたくさんの大人たちが「子どもの頃にここに行きたかった」と悔しがるに違いない。でこぼこで、ぬかるんでいて、雪が積もっていて、つるつるしていて、変な生き物だらけの自然の中で、子どもたちの感覚が磨かれ、大きく開いていく様子が伝わってくる。親しい友だちの家に子供が生まれたら、プレゼントに贈りたい一冊。
(編集部:たかしな)
(参考)
キープ森のようちえんプロジェクト