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里山の嫌われものが語る、あたたかく豊かないのちのお話
私の森.jp編集部としては見逃すことのできないタイトル『わたしの森に』。この絵本の語り手“わたし”は、意外にも雪国の森に棲む“マムシ”です。
「雪の 下で いっしょに
まっている ものが いる
まあんまあんまあん」
と、春を待ちわびる気持ちから、冬眠明けの「口をあけて だれかを しっぽまで たべたい きもち」、小動物たちが「むんむん」見える目、「はなれてくれればいいの」という人間との関わり、「まあんまんぱい」の子どもを生む営みまで……。
人間からは嫌われもののマムシの視点で、森の生命のたくましさ、豊かさが、優しく楽しく語られています。
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「まあんまあん」「むんむんむん」「むおんぐ」「しゅっしゅるううう!」など、オノマトペを多用したモノローグに命を吹き込んでいるのは、田島征三作の絵。ダイナミックなタッチで描かれた世界は、生命の讃歌のようでもあります。
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新潟県十日町市鉢集落にある田島征三の「絵本と木の実の美術館」を、詩人アーサー・ビナードが2年にわたって訪れ、雪国の四季とくらしを体験。その里山の生態系の中から生まれた二人のコラボレーション。本の帯には「はなさきから しっぽまで つつまれる ものがたり」とあります。何に、どんな風に「つつまれる」のか、ぜひページをめくってその世界にひたってみてください。
(編集部:おおわだ)