驚きのトリビアと可愛い脱力マンガであなたもきっと野鳥好きになる
読んでいる間じゅうほおがゆるみっぱなしの幸せな読書。まずマツダユカさんの描く野鳥たちがとにかく可愛い。とぼけた顔してとぼけたことを言って、人間の感覚ではギョッとするようなえげつないことでも、しれっと言ってのけたりして、それがもうたまらなく可愛い。さらに鳥類学者・川上和人さん監修の解説文が無類に面白い。本のタイトル通り、驚きのトリビアが次から次に繰り出される。目次からいくつか引っ張ってみるとこんな感じ。
「スズメはほおの斑点が大きいほどモテる」
「カラスはアリを浴びてきれいになる」
「シジュウカラはカタツムリでカルシウム補給」
「オシドリの夫婦は毎年相手が違う」
「鳥の目はあんがい鳥目じゃない」
見出しを見ただけで「え? どういうこと?」と思うようなネタが満載なのだ。本当は読んでのお楽しみにすべきだろうが、ちょっとだけ紹介すると……。水辺の杭の上などでいつも大きく羽を広げて日向ぼっこしているウ。ぼーっとしたのんびり屋さんのイメージだが、実は違うらしい。水の中での攻撃性を優先して潜水の邪魔になる羽の撥水性を捨てた結果、羽が乾きにくいらしい。水の中では敏捷に泳ぎ回る凄腕の殺し屋なのだと知るとウを見る目が変わる。
あのどこにでもいるスズメにも驚きのトリビアがある。スズメを獲物として食べてしまう猛禽類のオオタカを、スズメは味方につけることができるらしい。なんと天敵のオオタカの巣の下の隙間にスズメは巣をつくることがあるというのだ。見つかれば餌にされてしまうが、うまくいけば他の捕食者が恐れて近づかないとても安全な場所となる。発想が大胆すぎて呆然とする。
見開き左側の本文パートにはそんなトリビアの連打で本当に楽しいが、右側ページの4コママンガに登場する野鳥たちの可愛さは身悶えするほど。面白いだけでなく、「シジュウカラ、それ言ってそう!」と思わせてくれる表現力に感嘆する。野鳥好きさんはもちろんのこと、これまで特に関心のなかった人にもオススメしたい。読み終わる頃には、いっぱしの野鳥ウォッチャーになっているはず。
(編集部:たかしな)
<目次>
1章 いつも見かける気になるあいつ
スズメはほおの斑点が大きいほどモテる/ハトは本当は首をふっていない/ウは防寒性・防水性よりも攻撃性を選んだ/他
2章 食べることは、生きること
カラスはときに吸血鬼になる/メジロの舌は二枚舌/果物好きのヒヨドリはおなかがゆるい/他
3章 鳥たちの恋愛事情
タマシギは喉にホルンをもつ/モズはものまねでハートを射抜く/キツツキは大音量で愛を叫ぶ/他
4章 育て! 鳥の子
エナガのベッドはふわっふわ/キジバトの巣はざっくりしすぎ/イヌワシは兄弟殺しを運命づけられている/他
5章 けっこうすごい鳥のカラダ
ハヤブサは時速300kmで獲物を襲う/鳥の目はあんがい鳥目じゃない/サギが白いのは撥水加工のおかげ/他
6章 鳥にまつわるエトセトラ
ヒヨドリはもしかしたら3種いる?/カラスだってときに絶滅する/キジが国鳥に選ばれたのは桃太郎のおかげ/他