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森学ベーシック:5.森と産業:森と雇用

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森学ベーシック:5.森と産業:森と雇用

基幹産業になりうる林業

日本の森林のうち約4割は、間伐や枝打ちなどの手入れが必要な人工林です。そしてその手入れを担うのは林業に携わる人々です。ところが日本の林業の施業は低調で、林業労働者も減少に向かっており、衰退しているイメージがあります。

林業就業者数及び高齢化率の推移

一方、ヨーロッパでは先進国型林業が盛んに行われていて、中でもドイツは林業先進国として知られています。「森林・林業再生プラン」(平成21年12月25日、農林水産省が公表)の作成に当たっても、「フォレスター(森林官)制度」をはじめ様々な点でドイツを参考にしたと言います。

ドイツでは一つの地域の中に、木材を伐採する林業、加工する製材所、利用する住宅メーカー、バイオマス企業など木材に関わるあらゆる事業者が集まっています。フォレスター(森林官)はこの川上から川下までを緊密に結び、しっかりニーズを把握しているので、木材はむだなくすみやかに流通します。

ドイツが必ずしも林業に有利な土地というわけではありません。木材の価格も日本のスギの価格とほとんど同じで、人件費は日本よりも高いといいます。にもかかわらず、日本とは対照的にドイツの林産業は自動車、電気・電子、機械に次ぐ基幹産業となっており、雇用人口もそれらの産業と肩を並べています。

日本では、「林業経営に関する意向調査」 によると、毎年木材収入があり、家計の主な収入が木材販売収入である林業経営体*は、全体の5%にとどまり、林業以外で生計 を立てている林業経営体が大半となっていると言います。日本の森の雇用の現状はどうなっていて、これからどこに向かうのでしょうか。

*林業経営体:「保有山林面積が3ha以上かつ過去5年間に林業作業を行うか森林施業計画を作成している」、「委託を受けて育林を行っている」、「委託や立木購入により過去1年間に200㎥以上の素材生産を行っている」のいずれかに該当する者をさします。

 

森林施業を担う3つの主体

日本の森林施業の主体は林家、森林組合、素材生産業者等の3つに大別されます。このうち、「林家」とは保有山林面積が1ha以上の世帯で、「森林組合」と「素材生産業者等」はあわせて「林業事業体」と呼びます。「林業事業体」は、森林所有者等からの委託又は立木の購入によって、造林・伐採等の林内作業を担っています。

林家

「林家」の数は約91万戸で、そのうち約9割が10ha未満の保有です。数では1割強の10ha以上の林家が保有面積では約6割を占めています。また、「林業経営体」の数は約14万経営体で、そのうちの約6割は保有山林面積が10ha未満です。保有林面積が100ha以上の林業経営体は、数では3%にすぎませんが、面積では約7割を占めています。林業経営体の94%は法人以外でその大半は個人経営体(家族林業経営)です。

林業主体の経営がむずかしいことから小規模林家の施業・経営意向は低く、また、大規模林家でも相続をきっかけに、所有する森林が細分化されたり、経営規模を縮小したり、後継者が林業経営自体を放棄したりする例がみられます。これに対し、「平成24年度税制改正大綱」では、中心的な担い手となる後継者が円滑に事業を受け継げるよう、山林に係る相続税の納税を猶予する措置を講ずることが盛り込まれました。

森林組合の雇用労働者数の推移

森林組合

森林組合は、「森林組合法」に基づく森林所有者の協同組織で、組合員である森林所有者に対する経営指導、森林施業の受託、林産物の生産・販売・加工等を行っています。平成21(2009)年度末現在、全国の組合員数は約157万人(法人を含む)です。森林組合の雇用労働者数は減少傾向にありましたが、平成21(2009)年は増加し年度末時点における森林組合の雇用労働者数は、前年より4%増加して約2万7千人(1組合当たり平均39人程度)となりました。

 

素材生産業者

間伐の受託面積のうち、素材生産業者等の会社が占める割合は、「2005年世界農林業センサス」では18%だったものが、「2010年世界農林業センサス」では33%に上昇しています。また、素材生産業者等の会社は、主伐の約7割を実施しており、素材生産の中心的な担い手となっています。

森林・林業に関する資格所有者

森林・林業に関する専門技術者には、林業技師、森林インストラクター、樹木医などがあげられます。

林業技士

森林土木等の技術的業務に関する専門知識の実践を行い、平成23(2011)年6月30日現在、11,794人認定を受けています。
<一般社団法人日本森林技術協会認定>

 

森林インストラクター

一般の人々に、森林や林業に関する知識の提供、森林の案内、森林内の野外活動の指導等を行い、平成24(2012)年2月末現在、3,022人認定を受けています。
<一般社団法人全国森林レクリエーション協会認定>

 

樹木医

「ふるさとのシンボル」として親しまれている巨樹・古木林等の保護や樹勢回復・治療等を行い、平成23(2011)年12月末現在、2,020人認定を受けています。
<財団法人日本緑化センター認定>

 

平成7(1995)年度には、林業技士7,168人、森林インストラクター425人、樹木医389人で、15年あまりのうちにそれぞれ大きく資格所有者が増えていることがわかります。

一方で、林業普及指導員の数は平成17(2005)年の1,811人から平成23(2011)年の1,370人へと減少しています。都道府県全体の職員数は毎年減少しており、普及指導員も同様に毎年定員が削減されており、特に農業及び林業では一般行政職員数と比較して大きい削減率となっていることが減少の背景にあるようです。

「森と雇用」の新しい流れ

現在、森の雇用状況に対して、若い林業就業者が増加する動きや、今までにない多様な人材像が求められる流れ、林業の現場に女性が参加する現象、そして昔ながらの自伐林家のスタイルの復活など、新しい動きも見えて来ています。

緑の雇用で若い林業就業者が増加

国勢調査によると主に山村で森林の施業を行う林業就業者は減少傾向で推移し、高齢化率率(65歳以上の就業者の割合)は、平成17(2005)年時点で26%と、全産業の高齢化率9%と比べて高い水準にあります。

一方、35歳未満の若年者の割合をみると、全産業で低下傾向にあるのに対して、林業では平成2(1990)年以降上昇傾向で推移しています。特に平成15(2003)年度から、平成22(2010)年度までの8年間で、約1万2千人が新たに林業に就業しましたが、これは林野庁が実施している「緑の雇用」事業の効果と考えられます。

「緑の雇用」は、林業への就業に意欲を有する若者に対して、林業に必要な基本的技術の習得を支援する事業で、林業への新規就業者数は、「緑の雇用」事業の開始前は年間平均約2千人であったものが、事業の開始後は同約3,400人程度に増加しています。

農林水産業における若年者率の推移

人材育成マスタープラン

効率的な森林経営に必要な能力を持った人材を育成するため、平成22(2010)年に林野庁は「人材育成マスタープラン」を作成しました。「森林・林業再生プラン」 の実現を担う中心的な人材として、「フォレスター」、「森林施業プランナー」、「森林作業道作設オペレーター」、「フォレストマネージャー(統括現場管理責任者)」等を挙げています。

「フォレスター」とは、「市町村森林整備計画」の策定支援等を通じて、地域の森づくりの全体像を描くとともに、市町村が行う行政事務の実行支援を通じて、森林所有者等に対する指導等を行う人材のことです。平成 24(2012)年2月時点で、フォレストマネージャー 66人、フォレストリーダー71人、フォレストワー カー1,800人、全体で1,914人を登録しています。ドイツのようにきちんと購入先の市場を確保して、適切な量の木材を生産し、川上から川下までをきちんと管理することで、林業を安定した産業に改善することが期待されています。

フォレスター等の役割

地域ぐるみの林業再生

岡山県西粟倉村は、人口1600人の山村で、面積の8割が人工林で覆われており、近年は、手入れが行き届かない森林も増えていました。このような中、将来世代に価値の高い森林を引き継ぐべく、「百年の森林(もり)構想」が打ちたてられました。

個人所有の森林を10年間村役場で預かって管理を行う事業、初期投資のためのファンド、コアな村の顧客づくりなど、次々に仕組みを整え、2010年、地域商社「株式会社 西粟倉・森の学校」を設立。「挑戦者」募集と称してIターンによる移住者を50名受け入れ、「ニシアワー」ブランドの製品を発売するなど、地域ぐるみで雇用を生み出す林業再生の取り組みとして注目を浴びています。

西粟倉村の間伐材や農産品などを活かして様々なプロジェクトや製品を提案している「株式会社 西粟倉・森の学校」

西粟倉村の間伐材や農産品などを活かして様々なプロジェクトや製品を提案している「株式会社 西粟倉・森の学校」

 

経営が困難で縮小する流れにあった従来型の林業と、新しい取組みを通じて今までとは違うあり方を模索する新しい林業。「森と雇用」の形も、いままさに生まれ変わろうとしている真っ最中なのかもしれません。

林業女子会やNPOなどの新たな取組み

平成22(2010)年7月、京都府に設立された会を皮切りに、全国各地に「林業女子会」の結成が広まっています。女性に林業を身近に感じてもらうための林業体験イベントの開催など、女性が中心となって、林業に関する情報を発信する取組が注目を集めています。また、都道府県の女性林業技術職員によるネットワークづくりも進められています。

このほか、林業従事者と森林ボランティアの中間的な役割を担うNPOが、自伐林家と連携して、小規模所有者の森林の整備を促進する取組や、一般の出資者から資金を募って森林整備を支援する取組もみられます。

地域住民とNPO法人が連携した副業的な林業の取り組み(林地残材の運搬の様子・高知県いの町)

地域住民とNPO法人が連携した副業的な林業の取り組み(林地残材の運搬の様子・高知県いの町)

特に、NPO法人「土佐の森・救援隊」は、集約林業からの脱却と自伐林家的森業の復活を目指し、各地域で活動するボランティアの育成、技術向上支援を行って成果を上げています。

 
 

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