森をつくり森で暮らす、柳生博と家族の20年
30数年前、売れっ子俳優生活の真っ只中にあった著者は、自分と家族のバランスを取り戻そうと、八ヶ岳南麓に自らの手で雑木林をつくり始める。幼い頃の祖父の教えを守った「野良仕事」。間伐、広葉樹の植林、草刈り……ひたすらそれを繰り返し、一心不乱に森をつくりあげた家族と仲間達の冒険の日々。やがて、小さな森が息を吹き返すとともに多くの人が訪れるようになり、森の一部をパブリックスペースとして公開することになる。こうして1989年夏に「八ヶ岳倶楽部」が産声をあげた。
それから20年。「僕たちの森」は、木々がしっかり根付き、花が咲き鳥が歌い、たくさんの人が集まる立派な雑木林となった。長男は園芸家として著者の良きパートナーとなり、孫たちはこの森でジイジから自然と生きる知恵を学び、多くのスタッフやアーティストが巣立っていった。そして、年間10万人を超えるお客さんが訪れ、四季折々の美しい姿を楽しみ、森に抱かれる幸せなひとときを過ごしている。
「自然との折り合いを考えずして、豊かな未来を迎えることができない今、ここに暮らす僕たちのありのままの生活を通して、ひとつの確かなかたちを伝えることができればと思っています。」という著者の想いが、どのページからも静かに立ち昇って来る一冊。森での暮らしを始めるための心得、次世代への知恵の伝え方など、実践的なアドバイスも含まれていて読み応えがある。(編集部:おおわだ)