「自然暮らし」への憧れを思い出させてくれる一冊
私の「自然暮らし」への憧れの原点はといえば、子どもの頃TVアニメでみた「トムソーヤの冒険」に出てくるハックルベリー・フィンのツリーハウスに、「不思議の島のフローネ」!そうあの無人島での暮らしぶりです。
今はすっかり都会生活に馴染んでしまい、ネット漬けの毎日を送っている私ですが、この本はそんな私に改めて「自然暮らし」への憧れを思い出させてくれました。
「山で暮らす 愉しみと基本の技術」は、都市生活をしてきた、イラストレータの大内正伸さんご夫妻が、群馬県の山中にある築100年の古民家に移り住み、暮らしを築く試行錯誤の中で体得した技術を、あたたかいタッチのイラスト(実体験に基づいたものなので、とても分かりやすい!)と写真で綴る、山暮らしのための実用書です。
DIYの腕前には多少なりとも自信があった私ですが、この本で紹介される「基本の技術」とは、草や木を刈ることからはじまり、崩れた石垣を補修する/荒れた屋敷地を整える/山の水を家に引く/ひとりで小屋を建てる/薪炭火の技術、囲炉裏の再生など「えー!こんな事まで、自分で」と、意外にハード。読むほどに、私の憧れはその厳しさの前に薄れて行きそうです。
とはいえ、現代のハックルベリー・フィンは、チェーンソウなどのエンジン機器や電動工具も使いますし、4WDやインターネットだって使いこなします。
この本は、作者が古民家のご自宅でiMacとインターネットを駆使し、フルDTP(印刷用の版下までパソコンで作ってしまう)で作られたというから、そこは意外とハイテクな感じです。一方その制作現場はというと、iMacを置くテーブルは醤油樽の蓋とシナ合板で、足下には行火(あんか)、背後には火鉢といった、ローテクでラフなスタイル。しかもこれが電気コタツよりも断然快適というから、ハイテクでローテクでちょっといい加減で、なんだか楽しそうです。
「楽しくなければ自然暮らしは続かない」と、本書にも書かれていますが、 最初、憧れとDIY自慢程度ではとてもとても、、と思った自然暮らしも、ネットとパソコンで快適に仕事ができる、と読めばちょっとホッとしたりして。 「そこかよ!」というつっこみナシで。
※大内さんは、イラスト/著作活動だけではなく、音楽家として、ライブ活動などもされています。
神流アトリエ・SHIZUKU(http://shizuku.or.tv/)
(編集部:小森)