キャンプ体験ゼロでもきっと森に行きたくなる!
食いしん坊の人はPART 5「野外料理をつくろう」から見るといい。ローストチキンに骨付き豚スネ肉煮込み、カレーに鍋にドリアにパンとおいしそうな写真とレシピがわんさか載っています。道具が好きな人はPART1の「キャンプをはじめよう」を、自然遊び好きはPART4「自然の中で遊ぼう」を、理論派の人はPART6「キャンプのススメ」をあけてください。いずれも写真(キャンプの印象的な瞬間を捉えたものばかり!)と、イラスト(シンプルであたたかみがあって図解としてもわかりやすい!)たっぷりで、見やすく楽しく、いますぐキャンプに出かけたくなること間違いなし。
この本との出会いは、「TAMAGAWA CAMP」と題したイベントに参加したこと。キャッチコピーで「『災害』を乗り越える知識を、『楽しく』身につける。」という通り、デイキャンプのノリを楽しみながら、災害時に役立つ知恵や工夫を教えてくれた。筆者は防災がテーマの仕事をしている関係から、興味を惹かれて覗きに行った。ちなみにキャンプ体験は限りなくゼロに近い。
2時間程度のワークショップ形式で、この本を監修したSTEP CAMPの代表で、キャンプ・アウトドア歴40年の寒川一(さんがわはじめ)さんの指導のもと、参加者が協力しあいながら様々なアウトドアのテクニックを体験した。
川べりで集めた木の枝を薪に火を起こす。同じく川べりで拾った石や砂利とペットボトルを使って濾過装置を作る。多摩川の水を汲んできて濾過して火にかけてお湯を沸かす。半合のお米と50ccの水(これはペットボトルの水)をジップロックの袋に入れて、湧いたお湯に放り込んでお米を炊く。袋に入れたままぎゅぎゅっと結べば清潔なおにぎりのできあがり! 1リットルの牛乳パックを燃料に500ccの水をほんの数分で沸騰させて、ココアをつくってほっと一息。
「防災」の仕事をしていてつくづく思うのは、「防災」ということばがつくとなぜか広まらないということ。必要なこと、大事なことと頭ではわかりつつ、行動に結びつかない。義務感のように重荷に感じたり、説教くさく感じてしまう人も多い。だからいちいち「防災」などと言わず、キャンプを楽しむ中で知らず知らず、こんな風にスキルが身につくのが一番いい。
イベントの中で寒川さんが「よくサバイバルの技術ですねと言われますが、ぼくは違いますと答えます。その辺にあるものを使って、誰にでもできることばかりです。道具に頼らず、あれこれ工夫することを楽しんで欲しいだけです」と話していたのが印象的だった。便利すぎる道具に囲まれた生活から一歩踏み出して、試行錯誤を楽しんでみる。その話を聞いた瞬間、「森に行きたい! キャンプしに行きたい!」と思った。キャンプ体験ゼロなのに。
(編集部:たかしな)
< 参考 >
TAMAGAWA CAMP