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冬芽ハンドブック

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冬芽ハンドブック

著者など:広沢毅(解説)、林将之(写真)
出版社:文一総合出版
価格:1,320円

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冬芽ハンドブック
 

冬の森を何倍も面白くしてくれる一冊

いつだったか、自然観察の名人に雪の里山を案内してもらいながら「オニグルミの葉痕(落葉樹の葉が落ちた痕)は羊の顔に似ているんですよ」と教わったことがある。見ると、なるほどマンガタッチのとぼけた羊の顔がそこにあった。

森のことをまだよく知らない頃には、「葉っぱが落ちて枯れ木だらけの山に行ったって、たいして面白いことはないだろう」と思い込んでいたが、それは大きな勘違いだった。枝がむき出しになっている冬場こそバード・ウォッチング入門に最適だし、オニグルミの羊にも出会える。冬場だからこそ味わえる楽しみがあるのだ。

さて。この本は冬芽の本なのだが、葉痕や果実、枝の様子なども写真をたっぷり使って紹介している。いちばん最初が上に書いたオニグルミ。やはり羊の顔の葉痕の写真が大きく紹介されている。お隣のサワグルミの葉痕は人が眠った顔に見えるのだそうだ。

葉痕を追いかけると、カシワのページには『銀河鉄道999』の鉄郎が王冠をかぶったみたいな顔が見えるし、ヤマトアオダモの葉痕は『火の鳥』の猿田彦みたいな顔、という具合に見ていて飽きることがない。

もちろん本題の冬芽の写真も楽しい。巻頭に「冬芽と枝の検索表」というインデックスがついているのだが、ここには冬芽の写真がズラッと並んでいて、大変に美しい。顔みたいなのや、ブタの足先みたいなのや、カラフルなのや、眺めているだけでわくわくしてくる。冬芽がこんなにも表情豊かなことにびっくりしてしまう。

写真もきれいで、見どころがわかりやすく、説明も簡潔なのでビギナーでも使いやすい。本の版型は手軽なポケット判なので、まずは持ち歩いて、身近な街路樹あたりからチェックしてみたい。盛りだくさんな情報をすっきり美しくまとめた、この本のデザインそのものも魅力的だ。

(編集部:たかしな)

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