森と都会を行き来する30代仲良し3人組を描いた四コマ漫画
この本は、ふとしたことから森の近くで暮らし始めた「早川さん」のところへ毎週のように遊びにいく仲良しOLの「マユミちゃん」と「せっちゃん」、30代女性3人のお話です。
翻訳の仕事をする早川さんの田舎暮らしは、「ロハス」とか「脱○○」とかいったような気負いはなく、なんとも力が抜けていて、地元の新鮮な食材が手に入っても、美味しいものはやっぱり全国からお取り寄せしちゃう、自由スタイル。毎週のように田舎に通うことになるマユミちゃんとせっちゃんも、都会のOLらしく、毎回、どこどこの何々だよと言いながら評判の手みやげを持って行くから、早川さんも「わかってらっしゃる」とご満悦です。
そんな仲良し3人が、毎週一緒に森へ行き、いろいろな遊びをする様子が四コマ漫画に淡々と綴られていきます。
お話は、都会の生活スタイルを卒業しない30代OLたちの、飾り気のない等身大の会話を中心に進んでいきますが、実は早川さんが田舎暮らしを始めてから、近所の人たちと自然に繋がっていく様子も、ちゃんと描かれています。
エピソードの1つに出てくるカヤックは、近所のおじさんから譲り受けたもの。頼まれて近所の中学生の家庭教師を始めたことや、その交換にその子のおじいちゃんが早川さんの庭で野菜を作ってくれるようになったこと。着付けの資格を持っているので、美容院にチラシを持っていったら仕事が来るようになり、勧められて公民館で着付け教室を開くという展開もあります。
早川さんが都会で翻訳家だけをしていたら、こんな近所の人との繋がりはできなかったかもしれません。そんな風にいくつも仕事をしたり、お金ではない繋がりをもつような田舎での暮らし方も魅力的で、少し羨ましく感じます。
そして、何より印象に残るのは、森の中で早川さんとした会話が、都会で働く2人の心におクスリの様にじんわりと染みていくところです。
「やわらかくて柔軟性のある木は雪にも負けないんだね~」
「誰に見られてなくても咲くって清々しいね」
「手もとばっかり見ないで自分が行きたい場所を見ながらこぐと近づけるよ~」
こんな格言のような言葉がたくさん出てくるのです。2人は、気持ちがささくれ立った時や思わず毒づいてしまった時、早川さんが森の中で言った言葉を思い出します。 森へ行く時だけが楽しかったり、気持ち良いのではなくて、日々の中で悩んだり、落ち込んだ時も、森のことを思い出すことで、少し心が軽くなるコツが掴める気がします。
それから、早川さんが森の中で教えてくれる、植物の話や、カヤックやバードウォッチングのノウハウなど、森の楽しみ方も所々に散りばめられているので、ぜひ、そこにも注目して読んでみてください。
四コマ漫画なので、通勤中にもさらっと読める長さでおススメです。
(編集部:すぎた)