ハードコアな森好きをとことん満足させる絶叫系大特集
ネットではよく【閲覧注意】という文字を見かけますが、虫が苦手とか、悪食とかが苦手な方には、あらかじめ注意を促します。この雑誌の本体を手に取るのはもちろんのこと、今回のこの解説文も読まない方がいいかもしれません。ここから先を読んで、どんな気分になるかは、いわゆる「自己責任」でお願いします。
いいですか?
書いちゃいますよ?
次の行から先はご自身の判断で読んでくださいね。
表紙には大きく「森の恵み」と書いてあります。すぐそばには「【大特集】すぐそこにある自然を価値あるものに変える。」とあります。表紙の上には「特別保存版 身近な森の活用バイブル」とあります。森好きとしては「うんうん」とうなずきたくなる言葉ばかりです。でもその下には少し小さめの文字で「食虫VOL.1」とあります。「[収録レシピ]サクラムシのさくら餅、アリの子の白玉団子~タガメ風味~etc」などという見出しもあります。これはどういうことだろう? 何かの比喩だろうか?
いいえ。比喩ではありません。勇気のある方は52ページを開いてください。桜の木の下にいるとたまに遭遇するあの幼虫が、なぜかとてもおいしそうな桜餅にくるまれた姿を1ページを丸ごと使った高精細な、どアップの写真で鑑賞できます。向かい側のページには「昆虫食の基礎知識 取扱上の注意点」という、どこにニーズがあるのかわからない注意事項がわかりやすくまとめられています。さらにページをめくると「素材の味を堪能できる昆虫デザートレシピ」がクックパッドさながらのわかりやすい写真付きでこれでもかこれでもかと紹介されています。続く「食べられる虫 春夏カタログ」も圧巻です。17種の生き物が写真付きで、食材として紹介されています。春夏カタログ? ではいつか秋冬カタログも特集するのだろうか?
もちろん本誌はゲテモノ趣味だけが目的の雑誌ではありません。巻頭特集には「身近な天然食料図鑑」として食べられる野草の見分け方やレシピ、自然界をより深く理解するための「フィールドサイン解読術」など、森好きなら読んで嬉しい情報もたくさんあります。森の中のミステリスな廃墟を訪ねる「廃キング」や、「滝マニア」などのディープな特集もわくわくします。ただし、ときどき「きゃー!」と叫びたくなるような写真や内容も出てきます。雑誌の作りはとても丁寧で、写真も綺麗、情報の整理の仕方も上手、レイアウトも熟練の技なので、内容とのギャップはほとんど芸術的ともいえます。そのあたりも鑑賞のポイントかもしれません。
念のために。昆虫食はFAO(国際連合食料農業機関)も「食材や飼料に昆虫を活用することは、環境、健康、社会、経済にも良く多くの利点があります。」として有望な食材だと明言しているもので、決して奇をてらった話題ではありません。ベルギーでは学食で提供され始めており、フランスではここ数年で昆虫食を製造する企業が140以上設立されたという報道もあり、れっきとした国際的なトレンドなのです。
もっとも、冒頭にも書いたように、「そういうもの」への耐性のない人にはお勧めしません。でも「怖いもの見たさでちょっとくらい見てもいいかも」という人はぜひ手に取ってみてください。一人で読むのではなく、友達や会社の同僚などと一緒に見るとますます盛り上がるかもしれません。ただし運が悪いと友達を失ったり、会社で居場所を失ったりするかもしれないので、相手はよく選んで、「自己責任」でお願いします。
< 参考 >
FAO:昆虫の食糧保障、暮らし そして環境への貢献(PDF)
NHKオンライン「食糧危機の救世主? 世界に広がる昆虫食」
(編集部:たかしな)