人はこのようにして肉を食べるのか、と感心。
美しい図鑑のような、野鳥獣の捌き方・料理読本
編集部オフィスの近くに、それは美味しいパテを売っているデリカテッセンがあります。昭和な日本人であり、ハム・ベーコンとウインナーで育った私の、加工肉(シャルキュトリーというらしい)への印象を大きく更新してくれたお店なのですが、思えば最初の出会いは、「本州鹿の血のブーダン・ノワール」でした。
その頃は、今ほど鹿肉を食べられるみお店が近くにありませんでしたし、取材で訪れる森の多くで鹿の獣害が報告されていて、「鹿は血抜きがキモなんだ」とか、「ほとんどの猟師は売れる捌き方を知らない」「解体する場所がない」とか聞かされていましたから、私はどうしたらもっと身近に鹿を食べられるのだろう?と気になっていました。
ですから、野蛮でおしゃれな感じのする「本州鹿の血のブーダン・ノワール」が大変美味しく、鹿の血がこんなに洗練された料理として販売されていることに、とても驚いたのでした。
さて。本書はそのデリカのオーナーシェフ・神谷英生氏によって書かれたものです。プロのためのジビエ解説書なので、野鳥をはじめ、うさぎの捌き方なども写真入りで載っています。(鳥獣を「食肉材料」として見ることができない人には厳しい写真も少しあるので、ご注意を)
知りたかった国産ジビエの生息分布から、狩猟方法、流通・衛生管理(人に伝染する可能性のある病気なども)、価格まで、素人にも興味深い情報が丁寧かつ簡潔にまとめられていて、ぜひ図書館にもおいてほしい一冊だと思いました。後半にまとめられた大変美しく創造的なジビエ料理のレシピ群も必見です。
最初から最後までページをめくれば、しっかりお肉を食べたような気分で満腹。人間の「食べる」ことへのあくなき挑戦と知恵と技術と創造力と、ただただ圧倒されっぱなしの一冊なのでした。
(編集部:あかいけ)
< 参考 >
フレンチデリカテッセン カミヤ