The Night Life of TREES
著:Bhajju Shyam, Durga Bai, Ramsingh Urveti
出版:Tara Books
価格:5,000円
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インドで語り継がれる、美しい木々の神話
「インドを訪れたら、あの本を。」
そう心に決めてインドへ渡り、いくつもの書店をのぞくも、ない。ない。ない。
ガンジス川のほとりの小さな本屋で、「とっておきの一冊があるよ。」と店主が手渡してくれた時の、嬉しさたるや!
『The Night Life of TREES』(邦題:『夜の木』)は、中央インドのゴンド族が語り継いできた、木と森にまつわる19の物語からなる絵本。どの物語も、静かな力強さを感じる、ごく短い文章で綴られています。
親切な精霊が宿る「センバルの木」、小鳥のような形をした「ドゥーマルの木」、ゴンドの人々が花から酒をつくる「マフアの木」――などなど、日本では耳にしない木々の名前が本のうえを踊り、「一体どんな木?」と、想像は膨らむばかり。
物語からは、遠い昔から木が人間の日常とともにあり、聖なる存在として尊ばれていたことが伝わってきます。
そして、木々の挿絵!これらは、ゴンド出身の3人の画家によって描かれたもの。不思議な個性をまとい佇む木々の姿を眺めるうちに、まわりから音が消えて、神話の世界にひっぱり込まれてしまうような心地がします。
佇まいから美しい絵本の作り手は、南インド・チェンナイにある小さな出版社、「タラブックス」。漆黒の手漉き紙に一枚一枚、シルクスクリーンで刷られて、最後は人の手で綴じられる。半年以上かけてやっと数千部でき上がるという、今ではめずらしいハンドメイドの絵本です。ふと手にとるたびに、あたたかい紙の手触りとずっしりとした重みが伝わり、どうしたって豊かな気持ちになってしまいます。
こちらの絵本は翻訳版も出版されており、日本の本屋でも手に入れることができます。版によって表紙絵が異なるので、どの一冊に出会えるかも楽しみの一つ。ぜひあなたも、インドの木々の神話の世界を味わってみてください。
(編集部:うえだ)