「人も森も社会も三方よし!の森林浴」の魅力が丸ごとわかる
森ヨガ、森フェス、トレイルランなど森を利用した活動が人気を集め、企業のメンタルヘルスの一環として森林浴が注目され、また海外でも「Shinrin-yoku」がブームとなっている今。この本では、「森林浴事業」のフロントランナーである著者が、森林浴の医学的効果や全国各地の森で行われている取り組みを紹介しつつ、人材育成・健康経営の視点から新時代の森の活用法を提案しています。
国内はもちろんのこと、韓国の「山林治癒」、中国の森林療養、ドイツの自然療法「クアオルト」など多くの取材と実践を重ねてきた著者は、日本の森林浴が海外で注目される理由を「医学的エビデンスと、森にお辞儀をする日本人ならではのメンタルとの共存」であると分析。また、全国各地にある森林セラピー基地を取り上げながら、森林セラピー基地の成功はKPIでは測りきれないなど、現場をよく知る人ならではの視点や洞察が盛り込まれ、読んでいてはっとさせられることも。
大いに腑に落ちたのは、これからのAI時代において人間の身体性や感性はますます重要になり、それらを育み養うためにも森が果たす役割は大きいという主張でした。そのうえで著者は、そうした新しい時代に必要な人を育てる森林浴、個人の成長を助け企業の人材育成に役立つプログラムとして、独自に開発した「TIME FOREST」プログラムを紹介しています。
印象的だったのは、実際にこのTIME FORESTプログラムを実施した企業の担当者の感想。「森という環境のおかげで、受講生はリラックスして自己開示ができたようです。自分自身に没頭して自身の感性に触れ(内省と自己探求)、それが他者とは異なること、また他者もそれぞれの個性を持つことを実感するソロワークあたりから、各々が包み隠さず自分を表現し始め・・(後略)」
個人の成長、企業の健康経営、森と生きる地域のメリットと、多角的に森林浴を見つめ、新時代の「人を成長させる森林浴」を提案するこの本。読みながら脳裏をよぎったのは、子どもには森の幼稚園を、大人には新しい森林浴を、もっと普及させたいとの想いでした。
(編集部:おおわだ)
<目次>
はじめに
■1章 森林浴は今、可能性がある。
1 気分転換に森へ行く
2 目からウロコ。都会で働く人から見た森の魅力
3 企業の健康経営を支える森林浴
4 日本の森を森林浴で元気にする!
5 人も森も社会も! 三方よしの森林浴
■2章 森林浴の医学的効果
1 実証された森林浴の健康効果
2 五感が冴える! 森の刺激
3 疲れた身体を回復させる森林浴の効果
4 森と人の分かちがたい共生関係
■3章 海外が注目する日本発祥のShinrin-yoku
1 世界に広がるShinrin-yoku:森林医学の国際シンポジウム
2 中国:北京政府と森林療養の人材を育てる
3 フランス:国によって異なる森との付き合い方
4 韓国:ゆりかごから墓場まで、国家が進める森のサービス
5 ドイツ:自然を活用した自然療法「クアオルト」
■4章 地域と人を元気にする! 森林浴の可能性
1 身近な森で楽しく健康になる!
2 ヘルスケアコンテンツ1:森ヨガ
3 ヘルスケアコンテンツ2:日本型クアオルト
4 森林セラピー基地の挑戦
5 オススメの森林セラピー基地
6 森の近くに住む人ほど森林浴が必要なわけ
■5章 ヘルスケア事業としての森林浴
1 森と健康の場づくりに求められる視点とは
2 森林浴の事業をつくるということ
3 森林浴を仕事にしてみるとき
4 企業の健康を支える森林浴の可能性
5 危機迫る健康保険組合の挑戦
6 森を健康にする山側のスモールビジネス構想
■6章 人を成長させる森林浴
1 来るべきAI時代に森林浴が有効か
2 現代人が忘れてしまった「感性」とは
3 柔軟な発想と判断力を取り戻す
4 TIME FORESTという森林浴の始め方
5 研修事例:森林浴だからできる人材育成
6 TIME FOREST×組織開発
7 地域とともにつくり上げるプログラム
おわりに