昨年から何度かご案内している、巡回写真展のご案内です。これまでは都心部などでの開催でしたが、今回はいよいよ森の中へ。なんと熊野古道での開催ですって!これは行きたい!
熊野古道は、昨年の豪雨で崩れてしまった場所もありますが、迂回路も整備されたと聞きます。以下は川廷氏ご本人からのご案内。速水林業の協力を得て、何やら豪快なことになっているみたいです!
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川廷昌弘氏より:
会場の企画展示室のフロアには丸太を数本ドーンと置いて、チェーンソーやナタなどの道具や作業靴なども置いて、林業の現場を実感していただけるように工夫をします。全て速水林業のご協力によります。
会期も長いので是非とも日程調整されて熊野古道を歩きに来ていただけると良いなと思っております。会場近くの馬越峠は石畳がたくさん残る素敵なハイキングコースになっています。
この季節は、この地域特有の下草であるウラジロシダが新芽を伸ばしてとても幻想的な風景に。もしかしたら一年でも一番素敵な季節、写真家としてオススメです。ただ雨量がとても多い地域ですので、雨具のケアをおすすめします。
以下、写真展の詳細です。
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期間:平成24年 5月19日(土)~7月1日(日)
時間:午前9時~午後5時
場所:展示棟企画展示室
主催:三重県立熊野古道センター
協力:速水林業
FSCジャパン
■詳細
「熊野古道だから美しいのではなく人工林を抜けるから美しい。どれだけの歳月がたっているのだろうか。 この山に木々を植えた人達の労働によって私たちは癒されている。時空を超えた風景がその証し」と訴える、 写真家・川廷昌弘さんの写真を通じ、林業の現場を知っていただきたい思いから、本展を開催します。
■ギャラリー対談トーク
日 時:平成24年5月20日(日) 午前11時~12時
参加料:無料
場 所:熊野古道センター 企画展示室 アクセス
講 師:速水 亨(速水林業代表)
川廷昌弘(写真家)
■川廷昌弘プロフィール
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員 1963年芦屋市生まれ
京都産業大学卒 大阪写真専門学校夜間部卒 現在博報堂勤務
これまでに東京・大阪・名古屋などで20数回個展開催
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熊野古道に添う営み
人工林の美、林業の現場。
山は水を育み、水は流域を潤し海に注ぎ、人も町も全てを育む。人々は、古くからそんな山とかかわってきた。
日本は、海に囲まれた島国であるが、国土の約7割が緑に覆われた森の国。私たちは、便利な都市生活に幸せを求めて、自然の恵み、地域の個性を記憶の中に置き忘れて、高度経済成長期を暮らしてきた。その代償のように地球の危機が叫ばれ、どこから手を付けて良いのか途方に暮れてしまう日々。
そこに東北の大津波、紀伊半島の台風によって、改めてこの国が災害の多い国であり、幸せな暮らしは、自然への畏敬の念を持って生きる事だと誰もが思い返した。身の丈に合った暮らし、地に足の着いた生き方が、例えば林業を通して見えてくる。
林業は「心・技・体」。すべてを兼ね備えなければ、本当の「良い山づくり」はできない。技術が一流でも、小さな山の声が聞こえなければ自然は応えてくれない。僕が山で会った「樵(きこり)」たちと語り合って実感したこと。自分たちの山づくりが、50年後、100年後、次世代に引き継がれていく。僕たちは会社の仕事で50年後、100年後の後輩たちのことを考えて仕事をしたことがあるだろうか?
人の手が入ることで木々は健全に育ち、さまざまな生き物たちは住処を分け合う。そうして美しい「人工林」という景観が育まれている。そしてCO2の吸収力が高まり、生物多様性が育まれて、価値ある材となる。愛情たっぷりな森づくりが、地域を、国を、地球を、救う。
熊野古道だから美しいだけでなく、人工林を抜けるから美しい。どれだけの歳月が経っているのだろうか。この山に木を植えた人たちの労働によって、私たちは目や心を癒されている。時空を越えた風景が語りかける。
撮影をしているとき、僕はどこからか「山の精霊」に見守られていたように感じたと、山を持つ林業家に話をすると、日本の山では「生物多様性」だけでなく、「万物多様性」が育まれているのだと教えられた。魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)し、八百万の神がおわす、ここは多神教の国であり「伝承の国」日本なのだと。
僕は、地域の大切な資産、守りたい風景、記憶の風景を撮る。
川廷昌弘