地が森と聞いて多くの人が思い浮かべるのは木製の品物でしょう。けれども森の恵みはそれだけではありません。山菜の天ぷら、葉を天火で乾燥させてつくるお茶、炊き込みごはんなどなど、森はおいしいものの宝庫でもあります。縄文時代の遺跡から、クリやクルミをはじめ、ドングリ、トチなどが出土していることからも、古くはこれらの木の実類が日本でも大切な食材だったことがわかります。
ラの芽、ヤマウド、ギョウジャニンニクなど人気の高い山菜は栽培されるようになり、スーパーマーケットでも手にすることができますが、ドングリなどの森の木の実が一般の家庭の食卓に上がることはあまり多くないでしょう。
これは、アク抜きなどで手間がかかることもありますが、針葉樹林の人工林づくりのために、木の実が取れる広葉樹林が生活圏から失われてしまったことにも関係があるかもしれません。そう。木の実は広葉樹林の贈り物なのです。
一口にドングリと言いますが、シイ、クヌギ、カシ、ナラ、カシワなど、ブナ科の広葉樹になる果実で、大量のデンプンをたくわえています。ブナの森は木の実以外にも山菜やキノコ、獣、川魚などの食料の宝庫であり、同時に、薪などのエネルギー源にもなり、衣類やスゲ笠や籠などの道具類の材料を提供するなど、山の民の暮らしをまるごと支えていました。
韓国家庭料理店 さらんばん のどんぐり豆腐
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トチ餅やマテバシイの実を使ったお菓子や焼酎など、日本各地の郷土料理で、いまもこの「森の味覚」を楽しむことができます。また、「薬食同源」(医食同源)の思想が根強い韓国などでは、体調に合わせていろいろな木の実料理があるといいます。
この半世紀ほど日本の林業では建材需要に応えるため、成長に時間がかかる広葉樹の多くが切り倒されて、スギやヒノキなどの針葉樹だけの森に替えられてしまいました。もしも今また、木の実を使ったおいしい「ドングリグルメ」が人気になれば、建材としてだけではなく、食材の供給源としての広葉樹林に再び日が当たるかもしれませんね。
ころでドングリは、森の中に住んでいるリスやネズミや、カケスやオシドリなどにとっても重要な栄養源です。近年、里を荒らすといってニュースになるクマやシカ、タヌキ、サル、イノシシたちも、山の中の食材が取りにくくなったせいで人間の住む里にまで降りて来たと言われています。彼らの食料を奪ってしまっては動物たちにはもちろん、近隣の里の人びとにも大きな迷惑をかけてしまいます。
また、たとえばタラの芽はてっぺんの芽を摘まれてもその脇から2番目の芽が出てきますが、この2番芽を摘まれると枯れてしまいます。そういう基礎知識なしに好き勝手なことをしたら、森林を愛するどころか深刻なダメージを与えることになってしまいます。そこで山に山菜や木の実を採りに行きたいという人には覚えておいてほしい心構えをまとめておきます。
さあ、山菜・木の実採りの心構えはできましたか? できれば日本の郷土料理のレシピも調べてから、森を訪ねてみましょう。いままでとは違う、食材の宝庫としての横顔を見せてくれるはずですよ。
ネットで見つけたおいしそうなドングリグルメ
山菜や木の実料理の楽しい参考書
山菜採りの心構えや調理法のほか、樹木との遊び方の提案など盛りだくさん
樹木と遊ぶ図鑑―いろんな木と話をする方法(アウトドアガイドシリーズ)
どんぐりを使った工作からだんごの作り方まで紹介する絵本。