四季折々にさまざまな表情を見せてくれる森。「実りの秋」の森には、いつもと違う特別な出会いがありそうで、わくわくします。 広葉樹の森を歩いていてドングリを発見したら、いくつか拾って手に取ってみましょう。ひとつとして同じ大きさ形、色のものはありません。小さな実の一つ一つに表情がありどれも個性的です。拾った場所で上を見上げてみましょう。どの木から落ちてきた実か、わかりますか?
そのドングリはどんな感触ですか? 匂いは? しばらくじっと耳を澄ましていると実が落ちる音が聞こえるかもしれません。積もった落ち葉の上で“裸足”になってみたら、奥に潜んでいるドングリ達を皮膚感覚で見つけられるかも……そんな風に五感を総動員すると楽しさが深まります。
写真:Copyright (C) All Rights Reserved. Photo by 松原卓二
「シャリシャリシャリシャリ」という音を耳にして、ポトッと何かが落ちてきた。見ると、きれいに二つに割れたクルミの殻。そう、音の正体はお食事中のニホンリスです。クルミの殻はとても硬いので、私たちが拾って中の実を食べるのは一苦労。リスは一体どんなワザを使っているのだろう?と想像してみたり、木の実を食べる森の動物たちの暮らしを想う時間も豊かです。
森に棲む動物たちにとって、栄養価の高い木の実は貴重な食べ物です。リスやネズミ、カケスなどは、貯食といって、越冬用の食物を貯蔵する習性があり、ドングリなどを地中に埋め蓄えます。
そんな貴重な木の実を動物たちと分かち合うように少しだけいただいて、生命力のつまった森の恵みを食してみましょう。
森で見つけることができる木の実の多くは、あくが強く渋くて、そのままでは食べられません。(マテバシイやスダジイ、イチイガシなどのドングリは比較的タンニンが少ないので生のままでも食べられますが。)ヒトが食べられるようになるまで、水にさらしたり何度もゆでたりしてアク抜きをする。せっかくの森の恵みをおいしくいただくために手間をかける。ひと手間かけるのもまた幸せな時間です。
家族みんなで楽しめそうなドングリ料理は、ドングリせんべい、クッキー、ドングリだんご、ドングリご飯、ドングリコーヒーなどさまざま。伝統的なものでは「とち餅」が有名です。また、アクの少ないドングリなら殻のついたままフライパンで煎って、殻と薄皮をむいて食べてもOK。ヤマグリは茹でると甘味が強く味が濃くて美味しくいただけます。
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気に入ったカタチの木の実は、大切に持ち帰りましょう。そのまま飾っておいても可愛らしく、いくつか組み合わせるといろいろな動物が出来上がります。天然素材のひもなどでつなげてアクセサリーにしたり、クリスマスのリースに飾るのも一興です。お持ち帰りした森の時間、その余韻をたっぷり楽しめます。
拾った木の実を、庭や鉢に植えてみてはどうでしょう。芽が出るのは来年の春。それまでは、木の実が落ちた土の上のような環境を維持してあげます。春を心待ちにしながら、土の下でゆっくり流れる森の時間を共に過ごす。豊かな冬の過ごし方ではありませんか。