最近ゆっくり休んでいないなあ、なんだか気分が落ち込み気味だ、心身ともに疲れてしまった……。そんなとき、ふっと「緑」が見たくなったりしませんか? 森を歩きながら樹木や土の香りを感じ、鳥のさえずりに耳を澄ませ、木漏れ日や揺れる緑の光景を味わう。頬に風を感じながらすがすがしい空気を深呼吸する。そんな風に森で心地よい時間を過ごすうちに気分がリフレッシュし、なんだか元気になったという方も少なくないはず。
「森林療法」として科学的な効果も認められている森の癒しを感じるために。まずは森へ入ってみましょう。目的地を目指すというよりも、気の向くままにのんびりと歩くのが良いようです。さまざまな木肌や葉の色、梢や雲の動きなどが自然に目に入ってきて、自然のなかに居る実感が湧いてきます。
気になる場所、感じがいいなあと思う場所があったら、足を止めてみましょう。樹皮や下草、土の匂いをゆっくり感じてみたり、座って目を閉じ、風の音やせせらぎ、鳥のさえずりに耳を澄ませたり……。大きな木の幹に触れると、木のぬくもりが伝わってきますね。
ひらけた場所に着いたら、ゆっくりと胸をひろげて深呼吸し、澄んだ空気を全身にめぐらせましょう。気功や瞑想などをすれば、より深く森と交流できるかもしれません。ただボーッとするだけでも良いのです。大切なのは、五感を解き放ち、全身で森を感じること。何人かで森に入っても、一人静かな時間を持つことでさらに心が安らぐでしょう。
こんな風にして、日常から離れてすがすがしい森の空気に包まれ、豊かな森の恵みにひたる時間を味わいたいものですね。
行く先は、身近な森でも遠くでも針葉樹林でも広葉樹林でも、自分の好きな森を選べば良いのですが、森林療法に適したコースとして整備されている所もありますので、いくつか代表例をご紹介します。
五感を研ぎ澄ましてゆっくり森の中を歩くと、心も開放されます。そして、まるで身体が失われた自然を取り戻すかのように感じます。自然と切り離されて生きることの多くなった現代人にとって、森は癒しの場でもあるのです。
森が人を癒す、その心身への効果は科学的にも解明されています。一つには、樹木が発する香りに含まれるフィトンチッドによって血圧が下がり脈拍が落ち着き、ストレスホルモン「コルチゾール」が減少することが確認されています(森林総合研究所の実験による)。
加えて、林野庁が発表した「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査」では、森林浴によって、免疫を担うリンパ球の一種「ナチュラルキラー細胞」の活性化が高まるという報告もあります。
こうした効果を利用して心身の健康のために役立てようと、日本でも7、8年前から森林療法が注目されるようになりました。森林療法というと少し大げさに聞こえるかもしれませんが、「リラックスやリフレッシュを目的に森へ行く」ということだけでも良いのです。うつなど心の病を抱える患者さんの療法として、また、がん患者さんの療養や老人医療、障害者療育などの領域でも、森林療法が取り入れられています。
森という環境に身を委ねながら自分自身をゆっくり振り返ったり、木とじっくり触れ合って気功を行ったり。また、森の手入れをすることで心身のリハビリテーションを促す作業療法もあります。森のなかで過ごす時間が心身の健康につながる。森とともに人もすこやかになる。それが森林療法です。
*図の出典:関東・中部林業試験研究機関連絡協議会 情報 No.31(2007.3)
研究情報11「森林浴における気分転換効果とリラックス効果の測定」を元に作成