今年(2009年)80歳になる小林亀清さんは、森林施業と、五箇山の合掌造り維持・継承に48年に渡り携わっている茅葺き名人です。一昨年引退した後も、茅刈りや葺き替えの時には手伝いに参加するそうです。五箇山の合掌造りは、平成7年に世界遺産に登録され、その合掌造りの維持のために、葺き替えの技術を若い世代に指導しています。
合掌造りに使われてるもんはみんな、合掌が倒れないような働きを持ってるんですよ。スジカイは斜めに支えとるし、ハコ縛りは横につぶれないよう揺れんようにする力を持ってるんです。先人たちは家が倒れそうになっても元に戻る力学を分かってたから。中の見えないところで工夫があるから、何百年も倒れないんです。
茅をはがして、骨積みがむき出しになったところ。縦はクギザオ。横はヤナカ。太い中央はガッショウ。交差しているのはスジカイ。クギザオとヤナカはヤナカは互い違いに。ガッショウとヤナカはハコ結びで結束している。
もう一つ先人の工夫は使う材を適材適所で使うことですよ。腐りやすいところには腐りにくい木。真っ直ぐに収めたいところは、真っ直ぐな木を使ったり。 今は先人の知恵を利用してるだけなんです。先人の知恵で、森の力と力学の力が凝縮されて、合掌になるんじゃないかな。
合掌の材料はみんな自然のものでしょう。それに合掌っちゅうのは全てが地面に還る仕組みを持ってますから。骨組みで、ダメになった木があって取り換えたりしても、木は土に還るわけです。木は次の世代の木の肥やしになって、その肥やしで育った木をまた利用させてもらう。だから合掌造りは森があって、初めて成り立ってる建物だと思いますよ。合掌は森で出来てるようなもんです。森が無かったら合掌は生きていけません。 木には一本一本木に命があるんですよ。木は切られて死ぬけれども、合掌という姿でまた生きてるんです。合掌造りの木は死んだもんじゃないですよ。そういう風に考えたら、やっぱり森林ちゅうのはありがたいな、大切にせんなとかそういう気持ちが湧いてくる。感謝の気持ちを忘れてはいかんと思いますよ。
小林亀清 富山県南砺市 79歳(取材当時) | |
河合和香 東星学園高等学校三年(取材当時) |