独特のラッキョウ型で知られる伝統工芸品の佐世保独楽は、元々、どれだけ長く回せるかを競う喧嘩独楽だったそうです。山本さんは、奥さんの実家の佐世保独楽本舗を継ぐため銀行員の仕事をやめ、先代(義父)に師事して技術を習得、現在は3代目山本貞右衛門を襲名して活躍中です。長崎県特産品新作展最優秀賞など多くを受賞され、現在は実演や色付け体験を行うなど、伝統工芸の素晴らしさを伝える活動も行っています。
独楽の材料には、ブナ科のマテバシイていうどんぐりの木ば使うと。元々、マテっていう木は土壌がいいところに群生しとる。でも、切り場所とか時期で木の内部の質が違うけん、山師さんと伐り時期とかを話し合って伐ってもらう。何でマテバシイば使うかっていうたら、マテは、建築材になりにくかわけよ。昔からある遊び道具、玩具ていうとはそういう要らん物の中でその遊びに一番適しとる物から出来とるとよ。
轆轤(ろくろ)は、僕の手作り。使用する荒かんな、丸かんな、平かんなは全部自作。職人さんは、自分の体に合うように道具は自分で作る。僕は、25歳から独楽作りをやりよると。でも、僕が28歳の時に先代が急に亡くなったもんで、独楽作りは3年間一緒にしとるとけど、職人は道具を自分で作らんといけんわけで、それが一番大変やったたいね。
子供達に色付け体験をさせてあげてる時に、最初は全然言うこと聞かんでだらだらしよると。でも、だんだん目が変わって、真剣になるとね。それを見よって、よか体験させてあげてるかなっていう気にはなるよ。昔は、中学生から幼稚園生ぐらいまでが一緒になって遊びよるたい。それば通して、年上の人との付き合い方とか、年下の面倒は見らんばいかんとかば、勉強しよったわけたい。僕が、社会に出てから、そういう体験ばしとってよかったて思うけん、独楽で仲間と遊ぶのは残していきたいな、ては思う。昔みたいになることは無いやろては思うけど、この思いは伝えていきたいね。
山本敏隆 長崎県佐世保市 50歳(取材当時) | |
楠本里帆 佐賀県立武雄高等学校2年(取材当時) |