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あの人の森は?
あの人の“森”語り:竹村 真一さん

あの人の森は?

あの人の“森”語り

第二回ゲスト 竹村 真一さん プロフィールはこちら

桜の木がパーソナル・ツリー

子どものころ住んでいた茨木や高槻というあたりは住宅街だったので、近くには、せいぜい神社とかお寺の藪くらいしかありませんでした。ほんとの森に出会ったのはフィールドワークしながらアマゾンに行ったり、フィンランドの森を歩いたりしてからです。だから、小さいころの自分にとって身近だったのは森より木ですね。樹木です。そのころ必ず毎日登っていた桜の木がありましたし。木は自分にとって、パートナーみたいな感覚を自然に持てる対象ではありましたね。

フィンランドの先住民が兄弟の契りを結ぶ「わたしの木」と出会うとか、ケルト人は相談相手となるような木を森で見つけるとか、あるいは中国で、自分の気の体質に合ったパートナーの木と向き合って気功をする伝統があるとか、後になってフィールドワークをしながら知ることになります。もちろん、小さいころは、そんなに明確に意識していたわけではありません。

でも、「木の上にいる自分がホント」という感覚はありました。つまり、地上にいて、動物として歩き回っている自分とか、学校の教室で人間が作った椅子にすわっている自分よりも、桜の木に登っているときの方が落ち着くという感覚は、たぶんあったと思います。一人、木の二股みたいなところにうまくはまって。よくチーターなんかもそうしているじゃないですか。あんなようなものです(笑)。

桜と言えば、花見はもともと「花狩り」といって、花の生命力をいただく儀礼だったようです。一方的にいただくだけかというと、そうではなく、木の周りで飲めや歌えやの大騒ぎをするのは、桜をヨイショして、元気にして、という感覚があったようです。「サ」という神様が山から下りてきて田の神になる途中のトランジット、つまり休息の場が「サ・クラ」で、その季節が「サ・ツキ」だった。だから桜の周りで歌を詠んでほめちぎったり、芸能を披露して楽しませたりする。そんなふうにして人間の方も植物の世界に奉仕することを通じて、自分たちも大きな実りを得るというような相互的な関係が、そこにはあったわけです。もっともぼくの場合、家の近所にあったから桜だっただけで、これがアフリカだったら、また別な木があったかもしれませんが。

 

「タッチ・ウッド」で元気になる

実はぼくは電磁波過敏症で、ケータイを耳に当ててしゃべれない人間なんです。イヤホンを使わないとケータイは使えないし、ノートパソコンに直接手を載せていると10分ももたないんです。仕事柄、家で長い文章を書いたりして、パソコンと関わっている時間は長いです。では、どうしているかというと、ノートパソコンに木のキーボードと木のマウスをつけて使っているんです。それを見つけて以来、何時間やっていても疲れなくなりました。

竹村さんが手がけたITプロジェクトの一つ、「触れる地球」

その話をすると、あるイギリス人がいいことを教えてくれました。イギリスでは、疲れた人に「タッチ・ウッド!」と言ってあげるんですって。「木に触れよ」って。木に触れたら元気になる、癒されるよと。だから、面白いもので、ぼくは1日に何時間も木の上に手を載せて、仕事でも、日常生活でも、「タッチ・ウッド」しています。木のおかげでぼくは、このIT社会で、ITの果実を受け取りながら、ITの弊害からは守られて生きています。どうも木は電磁波の害を吸収するか中和してくれているようですね。ぼくにとっては不可欠のチューナーみたいなものです。

薪ストーブの炎でつくったポトフなんていうのは、やっぱりホントだという感じがします。ゆっくりとスローに熱が加わった食べ物を、炎を見ながら食べているときなんかね。これは単なるノスタルジーで言うのではありません。人間の高次元の情報処理能力を持った体とか脳は、今のがさつなIT社会の情報では満足できないところがあると思います。もっと高い次元のものを求めている。

 

人間は、そういう高い次元のものを、木や花などの植物を介して経験してきたと思うんです。そして、いまはまだ、人間が未熟すぎて捕えられないレベルの、人間と環境のバランスをチューニングする役割を植物が担ってくれているように感じます。人間と植物の共進化はまだ途上の段階で、これからが本番なんじゃないかと思います。

森からただ恵みをもらっているだけではあまりにも一面的だし、森からの恵みの経験もなく頭でっかちに「エコロジー」とか「森を守れ」とか言っても薄っぺらい。植物から生気をいただくという、おいしい経験、贅沢な快感を体で知ったうえで、人間の方も植物の世界にご奉仕するべきなんです。その両面が合わさって、本物のエコロジーをつくっていくといい。そのための出発点は、やはり、一人ひとりがパーソナルな木を見つけるとか、植物とパーソナルな関係を持つこととかいったことが一番大きいのかなという感じがしています。

プロフィール

竹村 真一

京都造形芸術大学教授
Earth Literacy Program代表

東京大学大学院文化人類学博士課程修了。Sensorium(97年アルス・エレクトロ二カ・グランプリ受賞)、デジタル地球儀「触れる地球」(05年グッドデザイン賞・金賞)や「100万人のキャンドルナイト」「aqua scape」など、さまざまなプロジェクトを推進。環境セミナー「地球大学」主宰。07年「water」展ではコンセプト・スーパーバイザーとして企画制作に携わる。08年7月の北海道・洞爺湖サミットでは、 国際メディアセンター(IMC)内の環境ショーケースにおける「地球茶室」の総合企画・プロデュースを担当。近著「water[水:mizu]」。

 

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