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伝えたい、森の今:第二回インタビュー:食べ物を包む「経木」の話

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伝えたい、森の今

第二回インタビュー:食べ物を包む「経木」の話

木を削り取った薄い板のことを「経木」(きょうぎ)といいます。もともとはお経を書き込んでいたというのが名前の由来で、主に食品の包装に使われてきました。今でもお寿司屋さんが仕込んだネタを載せるために氷の上に敷いていたり、お饅頭や肉まんを蒸かすときの底にしたり、納豆を包んだりと、さまざまな使われ方をしています。その経木をつくり続けているのが群馬県桐生市の佐藤経木工場。創業者で今も現場に立つ佐藤徳則さん(大正15年生まれ)は経木の魅力を次のように語ります。

聞き手・文:赤堀 楠雄(林材ライター)

土に還る自然の包装材

経木にはアカマツを使います。脂分が適度に入っているから色艶がいいし、粘りもあるんですよ。習字の墨はマツの煤からつくるでしょう。マツにはそれくらい脂分があるんです。経木もね、燃やすと黒い油煙が出ますよ。

昔は何でもこれで包んでたんですよ。サンマも味噌も佃煮もね。おにぎりもこれで包めば握ったままの感じでおいしいんです。木の香りもいいんだよね。いまはいろいろな材料が出てきて、昔ほどは経木も使われませんけどね、自然のものはやっぱりいいですよ。ひらひらとね、外に飛んでっちゃったとしても腐るだけでしょ。畑や田んぼに入っちゃっても土に戻るだけなんですから。

使い終わった後は土に還り、環境にもやさしい経木。材料にアカマツを使う訳やその取扱いについては、徳則さんから経営を引き継いでいる2代目の嘉延さん(昭和26年生まれ)に聞きました。

 

経木には国産のアカマツがいい

アカマツは香りもいいですし、白い色がきれいでしょう。外国のマツは赤くてダメですね。粘りもありません。日本のマツは全然違いますよ。粘りがあって強い。それと、アカマツが経木に良いというのは、節がない材料を取りやすいからなんですよ。マツ類は60cmから70cmおきに幹から枝が出るので、その間は節がないんです。スギやヒノキですか? あれは節だらけですよね。やっぱりアカマツが向いてるんですよ。

経木にする丸太は直径24〜26cmくらいの真っ直ぐなものがいいんです。それも芯が真ん中にある素性の良いものがいい。そういう丸太は松林の中にスゥッと伸びて立ってる木から取れます。雑木の中に生えてるようなのは、ねじれや曲がりが出やすくて、あまり良くないんです。松林でも一番外側に生えてるのは、ねじれたり、曲がったりが多いですね。このあたりでアカマツの良材と言えば長野です。ウチは上田近辺のアカマツを主に仕入れています。

アカマツはカビが入りやすい木なんです。ですから湿度が高くなる梅雨時から夏場には品質管理に気を遣います。伐採業者にも5月末から9月いっぱいくらいは、1週間で使い切るくらいの丸太しか注文しません。伐採してから時間を置くとカビてしまいますから、それくらいの量をこまめに運んでもらうわけです。

経木は丸太の製材→削り→乾燥という工程を経てつくられます。その中でも最初の製材が肝心だと嘉延さんは強調します。削りは息子の貴則さん(昭和58年生まれ)が担当することが多くなっていますが、製材はまだ「任せられない」のだとか。

 

経木の品質は製材で決まる

経木は1枚に5個から7個くらいの木目が入っているものがいいんです。そういう経木が削れるかどうかは、丸太からコマ(経木の原料になる板)をつくる製材の仕方で決まります。そのような木目をきっちり出すためには、どこから鋸を入れるのがいいか。丸太の形や年輪の様子から中がどうなっているかをイメージして、それを決めるわけです。

難しい木だと丸太を何度もひっくり返しながら、あれこれ迷うこともありますよ。ですから、これは簡単には任せられません。息子もまずは削り方をちゃんと覚えてもらわないと。製材を覚えるのはそれからです。

もちろん、削りも簡単ではありません。製材した板を鉋を逆さまにしたような刃の上で前後させ、薄い板を削り出す機械に貴則さんは付きっきり。次々と削り出される経木を真剣な目つきで眺め、時おり機械を微妙に調整しています。そんな貴則さんの仕事ぶりを眺めながら、嘉延さんの話は続きます。

 

削りながら刃を微妙に調整する

木は1本1本で質が全然違います。まっすぐに見えても微妙にねじれている場合があるし、同じ木の中に堅いところも柔らかいところもあります。削るときは、それに合わせて刃を微妙に調整しなければなりません。刃は鉋と同じ2枚刃です。厚い経木は1枚で削りますが、ウチのような薄い経木は2枚じゃないとうまく薄く削れないんです。

一番気をつかうのは逆目です。木目の左右で片方はすべすべした順目なのに、もう片方はざらついた感触の逆目ということがあります。逆目の部分は少し厚く削れてしまうので、そのまま削り続けるとその部分だけが多く減ってしまうんですよ。そうならないように、削っていて逆目に当たってるなと思ったら、その部分の刃を下げて調整します。下げるといっても、ほんの少しだけですよ。ウチの経木は厚さが0.15㎜から0.18㎜くらいですから、このへんの調整には微妙な感覚が必要になります。

佐藤経木工場は徳則さん、嘉延さん、嘉延さんの奥さんの京子さん、妹のみつよさん、長女の佳予さん(昭和54年生まれ)、長男の貴則さんと家族6人で経営しています。10歳のころに経木職人の道を歩み始めたという徳則さんに、その歴史を振り返ってもらいました。

 

上州の空っ風が経木づくりに向く

私は小学校4年の時に笠懸村(現みどり市)の経木屋さんの小僧になったんです。まあ奉公ですね。経木との関わりはそれ以来ですから、もう70年くらいにはなります。独立して自分の工場を持ったのは昭和31年です。昔は群馬に経木工場がたくさんありましてね、一番多い時で60何軒もあったんじゃないかな。生産量が日本一だったこともあるそうですよ。やっぱりこの空っ風が経木を乾かすのにちょうどよかったんでしょうね。

ただ、需要がなくなっちゃってね。今の若い者なんか、その良さがぜんぜんわからないでしょう。群馬の工場も5軒にまで減っちゃいました。それもみんな家族だけでやってますね。本当はね、これが一番いいんですけどね。確かに縦に裂けやすいというのはあるんだけど、それさえなければ包装には一番いいんですよ。使ったあとは完全に土に還るんですから。最近は納豆に向いてるなんていう業者も出てきましたし、もっと見直されればいいと思いますね。

 

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