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あの人の森は?
あの人の“森”語り:山田 玲司さん

あの人の森は?

あの人の“森”語り

「そのまま死んでも幸せ」ってくらいの一体感を森に感じるんです。 第四回ゲスト 山田 玲司さん プロフィールはこちら

遺伝子に刻まれた太古の記憶が目を覚ます

ぼく、言われるまでもなく森と海が大好きです。チベットに行ったり、フィジーに行ったり、バリ島に行ったり、気がついたら世界中の森に行ってます。北の森も南の森も良くて。でも「森って怖い」と思ってる人、けっこう多いですよね。確かに森の中で夕方になって帰れないときの怖さってすごくあります。それはもう本当に深い闇になるので。だけど、本格的に夜を迎えると、逆に森と一体化する感じを味わえるんですよ。

ダイビングで海に潜ると、最初のうちは「魚きれいだな」なんて、自分と対象の距離で見ているのが、ぷかぷか浮いているうちに自分が海の一部分になっちゃった感じがしてくる瞬間がきます。そういうレベルで「わー、おれ、いなくなる」みたいな幸せというのが、恐らく森にもあります。森を自分として見たり感じたりする。そうなると、こんなに安心できることはない。そのまま死んでも別にしあわせ、くらいの一体感を感じさせてくれます。

こういうこと言うとちょっと頭のおかしい人に思われがちですけど、夜、森の中で一人きりで焚き火を見つめていたりしたら、誰でもそうなっちゃうんじゃないかな。生命としての何億年分もの記憶が自分の中にあるわけで、「今日も死なずに山を通れたな」なんて原始時代の記憶が幸福感として目覚めるような感じがします。

それに夜の森って、実はすごく騒がしいんです。「夜だから1日が始まりました!」みたいな感じで、ギャーギャー盛り上がってくる。そこはもう、怖い場所というより、歓楽街みたいな楽しい場所だし、夜遊びの場所でもあり、学校でもあり、癒しの場でもあり、戦いの場でもある。本当は、一言では片付けられないくらい何重にも層をなしている場所なんです。

 

アースの役目を果たす森

2004年ごろ、週2本の連載を抱えてボロボロになって、「どこか行かなきゃヤバい」と思って、一人で逃げるように屋久島に行ったんです。1週間くらい川遊びしたり、海に潜ったり、山に登ったり、一通り体験しました。あれは救われましたね。屋久島で「おれ、森、すごく好きなんだ」と再確認しました。生えている苔から、流れる水から、何もかもが素晴らしくて、奇跡のような世界がそこにあって。

しかも森は哲学的でもあるんです。落雷で樹齢何千年の屋久杉が倒れると、そこに一筋の光が入る。すると、いままでその木のせいで育てなかった若手の連中がここぞとばかりに成長し始める。つまり森では、古い木が倒れて死ぬことを悲しむだけじゃない。シンプルな命の循環なんだというのを、ビジュアルに見ることができる。そういうのがあちこちにある。たまらないですね、あそこは。

みんな縄文杉だけ騒ぐけど、屋久島にはほんとにすごいクラスの“ヒトたち”がガンガンいて、縄文杉を一番奥の大日如来とすると、まわりにはお薬師様もいるし、日光・月光菩薩もいるしで、「あー、これが宇宙か」みたいなに感じます。森では、そこにもここにも神様がいる、みたいな感覚があります。ネイティブ・アメリカンの話ですが、変なモノに取り憑かれたら、歩きながら草の先をさーっとなでたり、木に抱きついたりするそうです。土の中に浄化して戻っていくので土いじりもいいらしい。森ってアースの役目を果たすと思いますね。

 

夜の森体験の原点はボーイスカウトのキャンプ

森との最初の出会いはボーイスカウトの夏季キャンプです。森の中でハイキングやったり野営を組んだりしながら、班ごとに競争して総合優勝めざして夢中になりました。小学生から高校生まで続けて、全国大会で五色沼とか、北海道の大雪山にも行ったんですよ。高校になると1人1個テントを持って、計画を提出して自分たちだけで出かけて、行った先で先輩から悪いこと教わったりして、もっと面白くなってくるんです。

もちろん、楽しいことだけじゃない。雨が降ると悲惨で、テントは水浸し、水汲みは地獄のようで、森を見る余裕なんてない。だけど、汗だくになって20リットルくらい水をくんで、ばっと上を見ると、わーっと高い木がそびえていて、何の音もしなかったり、風の音だけだったり、そういう瞬間は覚えています。夜中にトイレに行こうと思ってテントから出た瞬間に、木のシルエットの向こうにものすごい星空が見えるなんて体験をしたのも森の中。

もっと覚えているのが、ボーイスカウトのリーダーと言われる大人たち。ふだんはおせんべい屋さんとかトラックの運転手さんとかなんですが、キャンプでは「隊長」と呼ばれて畏怖すべき存在になる。隊長たちは、ぼくらがイベントをやっているとき、森の中でごろごろしながら、ビール飲んでタバコ吸って、すごく楽しそうにやってました。いま思えば子どもたちをダシにして、あの人たちはあれがやりたかったんだろうな、彼らにとってすごい癒しになっていたんじゃないかと思うんです。 だから、救われない大人はボーイスカウトのリーダーをやるといいですよ、きっと(笑)。

 

プロフィール

山田玲司

漫画家

1966年東京都生まれ。
小学校のころから手塚治虫に私淑し、20歳で漫画家デビューした後、恋愛のマニュアル化を風刺した『Bバージン』でブレイク。03年、宮藤官九郎と共に『ゼブラーマン』で白黒つけつつ、現実世界に希望を求めて、対談漫画『絶望に効く薬』でチベットの高僧からホストまで約200人にインタビュー。“非属”の概念に行きつき、『非属の才能』を執筆した。
現在、ビッグコミックスピリッツにて環境漫画『ココナッツ・ピリオド』を連載中。

 

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