カヤネズミの珍しい習性とは
日本で一番小さなネズミ、「カヤネズミ」。次のうち当てはまらないのはどれ?
- 草の上に球状の巣をつくる
- 寒くなると土の中で冬眠する
- 巣を「豊作のシンボル」とする地域がある
2寒くなると土の中で冬眠する
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世界に約1,000種いるとされるネズミの中でも、カヤネズミは珍しく草の上に巣をつくります。生息するのは主に、オギやススキやヨシなどの「カヤ」(草丈の高いイネ科植物)がまとまって生えている「カヤ原」です。昔からカヤ原は河川敷や休耕田に多く、こうした場所に巣をつくって子育てをします。
カヤネズミは、オギやススキなどの葉を器用に編んで、草の上のほうに8〜10cm程度の球状の巣をつくります。「親指サイズ」とされる自身の体の大きさからするとかなり高い位置につくるため、「空中巣」とも呼ばれています。出産の近づいたメスは複数の巣をつくり、その中のひとつに子どもを産み、他の巣は休息場所として使うようです。
カヤネズミの巣
また、冬眠をしないので、冬になって生息地の草が枯れてしまうと地面の近くに巣を作ることが多くなるようですが、その理由などはまだよくわかっていません。
主食は、エノコログサやイヌビエなどの小さな草のタネや、バッタやイナゴなどの昆虫。イネに営巣する際に少し米を食べますが、イネを食い荒らす害獣ではありません。むしろ、イネに混生するヒエや、イネにつくバッタやイナゴを好んで食べるので、古くから稲作とは共存してきました。
新潟県にはカヤネズミの巣を神棚に供える風習があり、福井県には「田んぼにカヤネズミが巣を作ったら豊作」という言い伝えもあったとか。カヤネズミと稲作文化とのつながりが、ここにも見出せます。
日本の稲作と共存してきたカヤネズミでしたが、土地開発や農業の近代化などによってカヤネズミの生息環境が悪化し、その数はあきらかな減少傾向に。現在ではレッドデータブックに掲載されるまでになりました。2021年のデータでは、ホンシュウカヤネズミは東京で「絶滅」、6県で「絶滅危惧II類」となっています。(http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=01050030111)
もし周囲に田んぼやカヤ原があれば、そこで偶然カヤネズミの巣を見つけることもあるかもしれません。その巣の中には子どもが居る可能性もあります。頑張って生き延びているカヤネズミを、そっと見守りたいものですね。
*なお、巣の目撃情報を「全国カヤネズミ・ネットワーク」が募集しています。
参考リンク
日本自然保護協会「人間の暮らしがつないできたカヤネズミたちのすみかが消えていく」
カヤネズミってどんな生き物?
日本のレッドデータ検索システム〜ホンシュウカヤネズミ
NHKダーウィンが来た!
「阿蘇」制作ウラ話~カヤネズミの“天空の城”は冬になると〇〇へ移動する?~
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