森のクイズ
Q
Q森のクイズ No.152

「艾 (もぐさ) 」はヨモギのどの部分から作られる?

みなさんもヨモギ(蓬)はご存知ですね?キク科の多年草で、身近な有用植物の代表選手といえます。
ヨモギの用途は広く、食用として草餅などに使われ、薬草としては婦人薬・入浴剤などに利用される他、化粧品の原料にもなります。伝統的医療である「お灸」はヨモギから作られる「艾 (もぐさ)」を熱して神経痛や皮膚病の治療を行います。

では、この「艾 (もぐさ)」はヨモギのどの部分を原料にして作られるでしょうか?

  • 葉と茎(全草)
  • 葉の全体
  • 葉の一部
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正解

3ヨモギの葉の一部
(葉の裏に密生する白い毛)
です。

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この白い毛のことを解説するキーワードが「トライコーム(trichome)」です。
多くの植物が毛を持っていますが、毛が生える理由は、強い光に対する防御、強風時に気孔から過度に水分を失う事を防止する役割、小さな害虫が葉の本体に近づきにくくする役割などと言われています。さらに多くの植物でトライコームは特殊な物質を貯めています。例えば、バジル、ミント、タイム等ハーブの匂い物質はトライコームに貯められており、害虫を予防しています。成分はテルペノイドやフラボノイドが多いようです。
いろいろな植物の毛に興味がわいてきませんか?

ヨモギの毛は、主に葉裏に密生しています。トライコーム(日本語では毛状突起と言います)は、形状や役割により細かい呼び名がありますが、ヨモギの葉の裏面に密生する毛状突起は毛茸(もうじ)腺毛(せんもう)から成り立っています。

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ヨモギの葉の表側(左)と裏側(右)

毛茸(もうじ)は植物の表面に生えている細かい産毛のことで、葉を害虫から守り、水分の蒸発を防ぐ役割があります。お茶の場合、新芽の時期に葉の裏側に細かな白い毛が生えていて、葉が成長するにつれてなくなっていきます。ヨモギの葉の収穫期も5月頃からとされていますから、同じような特徴を利用していると言えそうです。腺毛(せんもう)の方は、植物の体表にあって粘液や蜜を分泌する構造物のことですが、ヨモギの腺毛の油分にはシネオールという成分が多く含まれており、このシネオールが温熱作用とリラックス効果を高めます。

「艾(もぐさ)」こぼれ話

江戸に庶民に広まったお灸ともぐさ、その仕掛け人は近江商人でした。
仏教伝来の頃に日本へ伝わったといわれる灸治療ですが、庶民に広まったのは江戸時代も後半になってからでした。

艾(もぐさ)

ヨモギの葉を収穫してから製造工程に手間がかかり、艾(もぐさ)になるのは乾燥重量の1%程度という歩留まりの高級品だったため、貴族や武家の間で使われるに止まりました。それが庶民にも手が届く民間療法として普及したのは、江戸時代になってモグサを量産する体制ができたこと。その中心地は「伊吹ヨモギ」の産地である滋賀県(近江国)でした。
この地域には今でも江戸時代から変わらぬ製法で艾(もぐさ)を製造するメーカーが数軒残っています。

もう一つの理由は、近江商人が江戸市中でモグサを積極的に宣伝・販売したことでした。歌舞伎の節にのせた唄をつくり、吉原などでお客に使ってもらった結果、「艾といえば伊吹モグサ」と言われるほど流行したそうです。
今でいうCMソングやプロモーションの走りですね。

参考リンク1
滋賀県文化財協会HP 「お灸をすえるー伊吹もぐさー」
伊吹もぐさ亀屋佐京商店
一般社団法人 日本植物生理学会ホームページ「植物Q&A」トライコーム
日本薬学会ホームページ 「生薬の花 ヨモギ」
わかさの秘密 「ヨモギ」

参考リンク2(ヨモギの葉の写真(葉の表裏))
三河の植物観察「ヨモギ 蓬」
鹿児島鍼灸専門学校「艾(モグサ)の成分について」

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