森のクイズ
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Q森のクイズ No.149

トガクシソウの奇妙な異名はどれ?

日本人によって初めて学名がつけられた植物、トガクシソウ。この命名をめぐり、東京大学植物学教室で事件が起こり、その結果トガクシソウには奇妙な異名がつきました。その経緯について牧野富太郎がその自叙伝に記していますが、その異名とは?

  • 破門草
  • 出禁草
  • 逆鱗草
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正解

1破門草

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「トガクシソウ」
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破門草事件」については、2023年度前期放送のNHK連続テレビ小説『らんまん』の中でも取り上げられたので、視聴している方はピンときたかもしれません。『牧野富太郎自叙伝』の中にずばり「破門草事件」という項があって、“ことの真相を知っているのは今日では私一人であろう”と前置きして解説しています。そのまま紹介するとわかりづらいので、原文はリンク先でお読みいただくとして、少し整理します。

登場人物は、東京大学植物学教室教授の矢田部良吉。ロシアの植物学者、マキシモヴィッチ。そして東京大学植物学教室に出入りを許されていた在野の植物学者、伊藤篤太郎3人です(ちなみに矢田部教授はドラマの中で要潤さん演じる田邊教授です。マキシモヴィッチはドラマ中もそのままの名前が使われており、伊藤篤太郎は下の名前だけ変えて登場しました)。

伊藤篤太郎は、祖父が東京大学教授・伊藤圭介という一族の出身で、トガクシソウは叔父・伊藤謙が1875年(明治8年)に戸隠山で採集し、小石川植物園に植栽。その標本を1883年(明治16年)にマキシモヴィッチに送り、マキシモヴィッチがメギ科ミヤオソウ属の一種として1886年にロシアの学術誌「サンクト・ペテルブルク帝国科学院生物学会雑誌」にPodophyllum japonicum T.Itô ex Maxim. として発表していました。

前後して、1884年(明治17年)に矢田部教授も戸隠山で本種を採集していました。小石川植物園に植栽したものが1886年(明治19年)に開花、1887年(明治20年)にマキシモヴィッチに標本を送り、鑑定を仰いだところ、翌1888年(明治21年)3月「本種はメギ科の新属であると考えられ、Yatabea japonica Maxim. の学名をつけたいが、正式な発表前に花の標本を送ってほしい」という回答がきました。

これを聞きつけた伊藤篤太郎は、自分が発表したトガクシソウが新属で、その新属名が 矢田部教授に献名され、Yatabea となる予定と知り、急遽同年10月に、イギリスの植物学雑誌 Journal of Botany, British and Foreign 誌に、新属Ranzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô (1888) として発表しました。

マキシモヴィッチによる Yatabea japonica Maxim.は、伊藤による発表の後となり、学名としては無効となりました。これを知り怒った矢田部教授は伊藤篤太郎を出入り禁止処分とし、植物学教室から追放しました。こうしてトガクシソウは俗に「破門草」と呼ばれるようになったのです。

後味の悪い事件ですが、これ以前には日本人が学名をつけたことがなかったので、画期的な出来事でもありました。そういうわけで伊藤篤太郎は日本で初めて学名をつけた人物となり、トガクシソウは日本人により学名を付けられた最初の植物とされているわけです。

こちらもどうぞ
私の森.jp>森のクイズ>牧野富太郎が命名した植物は?

参考リンク
青空文庫『牧野富太郎自叙伝 第一部 牧野富太郎自叙伝』(牧野富太郎)
植物和名ー学名インデックス YList「トガクシソウ」
東京大学・日光植物園「トガクシソウ(別名:トガクシショウマ)」
Wikipedia「トガクシソウ」
Wikipedia「矢田部良吉」
Wikipedia「カール・ヨハン・マキシモヴィッチ」
Wikipedia「伊藤篤太郎」

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