クモの糸より強い糸は?
一部の虫が出す「糸」。その強度がクモの糸より強く、天然繊維として有望視されているのは次のうちどれ?
- ヤママユガの糸
- ハバチの糸
- ミノムシの糸
3ミノムシの糸
クモやミノムシ、カイコなどの虫が出す糸、天然の繊維「シルク」。その多くはタンパク質でできています。研究では、ヒトの生体への親和性や物質透過性があることがわかっており、手術用の縫い糸に使うと抗体反応が起きにくいという事例や、コンタクトレンズに使うと酸素を透過できる機能が役立つなどの事例もあるそうです。
そうした特性を応用しようと、シルク繊維の中でまず注目されたのはクモの糸。強度が高いとして期待されましたが、採取も飼育も難しく、量産が困難でした。その後近年になって、ミノムシのミノを構成する糸やこれを支える糸が、弾性率(変形しにくさ)、破断強度(繊維を破断させるために必要な力を数値化したもの)、タフネス(繊維が破断するまでに吸収できるエネルギー)など、糸を評価するすべての指標においてクモの糸を上回ることが判明。しかもミノムシは餌を与えれば繰り返し糸が採れ、大量飼育も可能なため、さまざまな産業に活用できる新素材として有望視されるようになりました。
たとえば、医薬品メーカー等が「1匹のミノムシから一度に数百メートル単位の糸を採取できる方法」を確立して、自動車部品などに使われる繊維強化プラスチック(FRP)への応用を進めたり、「ミノムシの糸と導電性高分子のポリアニリンを組み合わせてレーザーを伝搬する光ファイバーとしての機能をもつ複合繊維」が開発されたり、新しい動向が伝えられています。他にも私たちの知らないところで、既にさまざまな用途でミノムシの糸が使用されているかもしれません。
ところで、ミノムシと呼ばれているのは「ミノガ」というガの幼虫時代の姿。初夏のころに卵から生まれ、秋までに成長して冬はミノの中で冬眠、春になるとさなぎから成虫になります。成虫のガは口が退化していて餌をとることができないため、幼虫時代に蓄えた栄養を使い果たすと死んでしまいます。寿命はおよそ1年。現在、絶滅危惧種に指定されている地域もあるようです。
木の枝から糸を垂らしているミノムシに出会ったら、そっと見守りたいですね。
参考リンク
ビズサプリ〜テクノロジー探訪「ミノムシから作る、世界最強の天然繊維
日本経済新聞「ミノムシの糸で工業製品 興和と農研機構が技術開発」
TSUKUBA JOURNAL「ミノムシが産生する高強度繊維と導電性高分子を組み合わせた新規複合繊維材料を開発」
るるぶkids〜昆虫「ミノムシ」
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