クロモジ茶にクロモジジンなど、人気の高まっているクロモジ。高級楊枝の材として知られ、楊枝そのものを「黒文字」と呼んだりもします。クスノキ科の落葉低木で、日本では北海道西部から九州北部などに広く分布しています。

古来、東北、新潟、京都などの地域では「鳥木、鳥柴」として、狩りの獲物をクロモジの木の枝に刺して神への供物とする風習があったそうです。また、山陰や滋賀、山形などでは、小正月の「餅花」にクロモジ類が使われています。

クロモジは保温、健胃、頭髪の脱毛・フケ防止などの薬効があるとされ、枝葉を布袋に入れて肩こりや腰痛、関節痛の入浴剤に、煎じて脚気や胃腸炎に、水溶液を去痰に、粉末を止血に用いるなど、民間薬としても重宝されてきました。根皮と枝葉には「テルピオネール」「シオネール」等、のど飴にもよく配合されている成分が含まれており、これらの成分には抗炎症作用が認められています。

そして、2021年9月に行われた日本生薬学会第67回年会で発表されたのは、クロモジの熱水抽出物（クロモジエキス）が従来型コロナウイルスの一つ「コロナウイルスOC43」の増殖を培養細胞において抑制すると同時に、クロモジ精油がインフルエンザウイルスの感染性を失わせる、という研究結果でした。この研究では、インフルエンザの「細胞への吸着・侵入が起きている感染開始から1時間後までの時間帯でクロモジエキスを作用させると、全く作用させない場合と比較して99.5%以上、ウイルスの増殖を抑制できている」ことが確認できたといいます。驚くべき抗ウイルス作用ではないでしょうか。

さまざまなウイルスと生きる時代。私たちは、このような健康効果の認められたクロモジをお茶やお酒、アロマオイルなどで暮らしに取り入れるとともに、クロモジの産地や作り手の応援もして行きたいものです。

参考リンク
日本メディカルハーブ協会｜クロモジの植物学と栽培
信州大学｜信大独創図鑑｜国産ハーブ「クロモジ」がインフルエンザウイルスを99.5％以上ブロックするという新事実
公益社団法人　日本薬学会｜生薬の花｜クロモジ
Wikipedia：クロモジ

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