本年度の森林白書 第I章のテーマは、木材の需要拡大 〜新たな「木の文化」を目指して〜。 ここでは、森林・林業再生のために不可欠な木材需要の拡大について、その背景とこれまでの取り組み、 そして注目すべき最新の動向が取り上げられています。
戦後造成された約1000万haものスギ・ヒノキ人工林。そこでは、 伐採して木材として利用可能な50年生以上の木が増えており、10年後には6割に至ると見込まれています。 日本の人工林は資源として充実し、これまでの「造成」する時期から「利用」する時期へ移行しつつあります。
では、実際にどれだけ利用されているのでしょうか。
国産材の供給量は1967年をピークに減少、2002年を底として、最近は増加傾向にあります。 と言っても、木材自給率は2009年で27.8%。そして、一人当たりの木材需要量で見ると、 1973年の1.08m3/人をピークに、2009年には0.50m3/人と約半分にまで落ち込んでいます。 とりわけ、製材用材の減少が著しく、これは主に住宅着工戸数の減少によると考えられます。また、 紙の原料となるパルプ・チップ用材の需要量も大幅に減少しています。
一人当たりの木材需要量が落ち込んでいる上に、日本の人口は今や減少に転じ、今後さらに減り続けると予測されます。となれば、住宅着工件数も紙の利用も増加は期待できません。もし、何の取り組みもせずに現状のまま推移すれば、日本の木材需要量はどんどん減少し、一方では森林資源がどんどん増えて余ってしまう……。そこで、木材需要の拡大に向けてさまざまな取り組みが行われているのです。
(右図:新設住宅の木造率が上がっているのは、住宅総数が大きく減少しているため。クリックで拡大→)
国産材需要の約55%が建築用材であり、住宅を中心とする建築用材の需要拡大が木材全体の需要拡大に大きく貢献する。そのような考えのもとに、林野庁では2004年度から曲がり材や間伐材を使用して集成材や合板を低コスト&大ロットで安定供給するシステムを整備。また、2006年度からは、地域材の利用拡大と森林所有者の収益向上を目指す取り組みを推進。
こうした動きを受けて、住宅メーカーも積極的にスギ・ヒノキなど国産材を利用するようになり、あるメーカーでは2008年に主要構造材の国産材使用率を70%まで高めています
2009年には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行。「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」社会に向けて、住宅メーカーや関連団体では木造による長期優良住宅の開発が進められています。
また、2001年にスタートした、森林所有者から住宅生産者が一体となって消費者の納得できる家をつくる「顔の見える木材での家づくり」も増加傾向。全国各地の自治体で、地域材を利用した住宅を普及する取り組みも拡大しています。
住宅分野以外でも、公共土木工事での丸太材利用や、民間での国産材の木杭を利用した地盤補強工法、間伐材等を使用した合板型枠、木製ガードレールや遮音壁など、土木分野での国産材利用も。私たちの身の回りでは、オフィル家具やコピー用紙、封筒、名刺、その他さまざまな日用品への「木づかい」が広がっています。
そして、化石燃料に代わるカーボンニュートラルな燃料として、木材のエネルギー利用も推進されています。木材を小さく砕いた「チップ」は、2000年の建設リサイクル法により建築物の廃棄木材に由来するチップの利用が進められ、2004年の原油価格高騰を受けてエネルギー利用が広がってきました。
おが粉等を圧縮して成形した「木質ペレット」は、1982年に国内生産が始まったものの普及には至らず、2002年頃から公共施設や一般家庭におけるボイラーやストーブの導入が進み、生産量が大幅に増加。東日本大震災の被災地でも、数多くのペレットボイラーやストーブが緊急導入されました。
左:木質ペレット/右:避難所で喜ばれたペレットストーブ(提供:日本バイオマスネットワーク)
こうしたさまざまな取り組みにより木材の需要を拡大することは、日本が古来より培ってきた「木の文化」をさらに発展させ、新たな木の文化の創出につながるとの期待を述べて、本年度の森林・林業白書14ページが締めくくられています。
日本と森の関係についてはこちらにもまとめてあります。写真もテキストも面白いのでぜひ!
宇治橋神域側鳥居 | Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Tawashi |
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