「鬼」の由来は?
節分やアニメでも活躍する鬼ですが、鬼という言葉の由来、語源については諸説あります。次の中で当てはまらないのはどれでしょう?
- 「穏(オン、オヌ)」からの転訛
- 「尾根(オネ)」からの転訛
- 「大人(オオヒト)」からの転訛
(2)「尾根(オネ)」からの転訛、は当てはまりません。
鬼の語源については1)や3)の他にも「陰」「兄」からの転訛といった説もあり、さまざまですが、いずれも「推論の域を出ない」とされています。
鬼は日本の代表的な妖怪の一つであり、超人的な力を持ち、人間に厄災を与える存在。その姿は、赤・青・黄・緑・黒などの肌、毛むくじゃらで筋骨たくましく、人面に牛角・虎牙が生え、腰には虎皮、手には金棒など、異形の者として描き語られます。住んでいるのは人間界に隣接する他界(海上、山中、地下、天上)で、鬼はその境界を乗り越えて自由に往復できるとも考えられていました。
他界から人間界に姿を現し、人を襲撃し、挙句の果てに食べてしまうこともある鬼ですから、人々に幸福をもたらす「神」とは対極に在りそうですが、民俗学者の折口信夫は、「鬼と神は同一」と言います。さらに、時代の変遷の中で「悪」の面が強調されるようになったとし、鬼は「大人(オオヒト)」であるとの巨人説も唱えました。
また、昔は里に住む村人にとって山は異界であり、山で暮らす猟師や山賊、山岳修行者などの風貌や生活形態は「異人」のものと写りました。それらの「異人」を「鬼」とみなす習俗もあったようです。
鬼の研究でも名高い歌人の馬場あき子氏は、日本の鬼の系譜を次の5つに分類しています。まず、最古の原像は「祝福のために現世へやってくる祖霊や地霊」。次いで修験道の流れを受けた山伏系の鬼、天狗が登場。別の流れとして仏教系の邪鬼、夜叉など。4つ目は盗賊や放逐者などが山に入って鬼となった人鬼系、そして、怨恨・憤怒などの情念から復讐のために鬼となることを選んだ者・・・
悪から善、神まで、多様な現れ方をして互いに変換しうるもの。神から鬼、鬼から神、人間から鬼、鬼から人間への移行も可能。超人的なパワーによって人々の暮らしに禍いも福ももたらす・・・日本の鬼はそんな風に人々に捉えられ、祭りや遊び、風俗の中に根付いてきたのですね。
パワフルな鬼にも苦手なものはあり、臭いのきついものや尖ったものは大嫌い。イワシを焼くときに発生する大量の煙と臭気や、ヒイラギの葉のトゲによって目を刺されることを恐れる。だから節分には、玄関先にヒイラギとイワシを飾って鬼を撃退する風習があるのだとか。
ちなみに、鬼が「神」として祀られている例は現在もあり、「日本の鬼の交流博物館」によれば、青森県弘前市の「鬼神社」、埼玉県嵐山町の「鬼鎮神社」、大分市の天満社境内の「鬼神社」、福岡県添田町にある玉屋神社境内の「鬼神社」など。鬼ファンとしては訪れてみたいものです。
左:玉屋神社境内の「鬼神社」、右:埼玉県嵐山町の「鬼鎮神社」参道
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参考リンク
Wikipedia「鬼」
改訂新版・世界大百科事典「鬼」
「折口信夫全集 3」鬼の話(青空文庫)
日本の鬼の交流博物館
「鬼の研究」(ちくま文庫) |馬場 あき子
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