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森学ベーシック:1.日本の森・世界の森:暮らしのなかの輸入材

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森学ベーシック:1.日本の森・世界の森:暮らしのなかの輸入材

日本は木材の輸入大国

木造建築、ウッドデッキ、床や柱、テーブル、机、椅子、ベッド、棚などの家具。そして、小さなものではお椀や箸、 おもちゃ、ほうきの柄まで……。私たちの暮らしのなかで活用されている「木」の多くは、海外からの輸入材です。

我が国への産地別木材(用材)供給量(丸太換算)

平成22年版森林・林業白書 参考資料を元に作成(数値は平成20年時)

日本は国土の68%が森林でありながら、木材の輸入大国。国内需要の約8割、約6,300 万m3(丸太換算、 2007年財務省「貿易統計」)の木材を輸入しています。主な輸入先は、カナダ、オーストラリア、ロシア、 アメリカ、マレーシア、欧州など。これらの木材は、米材(アメリカ、カナダ)、 南洋材(インドネシア、 マレーシア、その他)、北洋材 (ロシア)、欧州材(ヨーロッパ)、その他(オーストラリア、 チリ、ニュージーランド、中国など)と分類されています。

北米材

●北米材:アメリカ及びカナダの、米ツガ(ウエスタンヘムロック)、 米マツ(ダグラスファー)、など、針葉樹の丸太、製材、パルプ・チップ。(右写真※1)

南洋材

●南洋材:インドネシア、マレーシア、フィリピン、パプアニューギニア、 シンガポール、ソロモン諸島、ブルネイの7カ国から輸入される、ホワイトラワン、 イエローメランチなどの合板が中心。

北洋材

●北洋材:ロシアの北洋カラマツ(シベリアカラマツ)、北洋エゾマツ、北洋トドマツ等の丸太が主。

欧州材

●欧州材:多くは製材品で、集成材に使用するホワイトウッド(オウシュウトウヒ)の板材の需要が増加している。

 

輸入材の用途

これら輸入材は、私たちの身の回りで実際どのように使われているのでしょうか。まず、 木造建築の例を見ると、土台や柱には米材の米マツ、米ツガ、米ヒバなど。床材や壁材としては、 欧州材のホワイトウッド、レッドパイン、北洋材のアカマツ、ナラ材、タモ材、メープル、 南洋材のイエローメランチ(合板)など様々な樹種が用いられています。

ロシアで伐採し中国で加工される例も多い

ロシアで伐採し中国で加工される例も多い

家具はどうでしょう? たとえば、学習机。近年は中国で製造されたものが多く、その多くが北洋材 のナラ材、タモ材で作られています。これらの木材を産出するのはロシアの極東に位置する沿海地方の豊かな森ですが、 ロシアで伐採されたナラ材やタモ材が中国で加工され、学習机として日本へ輸出する……。

違法な伐採による家具を買わないためには、FSCなど森林認証マークのある製品を選ぶ、メーカーに確認することなどが必要です。

輸入材の用途として木造建築、学習机の例をあげましたが、もちろん、輸入材ばかりが使われているわけではありません。 表のように、国産材にもそれぞれの特長を活かした使われ方があり、その利用が促進されています。

 

暮らしのなかの国産材と輸入材

用 途国産材の例輸入材の例
住宅/構造材杉(土台は赤身)、檜、唐松、欅(大黒柱など)、ヒバ(一部地域)米マツ、米ツガ(土台は防腐処理)、米ヒバ、北洋カラ松、欧州アカマツ、スプルース(トウヒ)
住宅/内装材
(造作、建具)
杉、檜、欅、松、サワラ、ミズナラ、桜、タモ、カバ、楡(ニレ)、橅(ブナ)スプルース、パイン、ホワイトウッド、ビーチ(ブナ)、オーク(ナラ)、アッシュ(タモ)、メープル
合板(ベニヤ) シナなど
(近年は杉、檜、唐松なども)
ラワン、メランチ、米マツ、カラマツ
外装材、デッキ材檜、ヒバ、栗、唐松、杉(焼き杉など)米スギ(ウェスタンレッドシダー)、米マツ、イペ、ジャラ、セランガンバツ、ウリン、チーク
家具材、小物桐、檜、杉、櫤(タモ)、楢、栓(セン)欅、桜、栗など多数タモ、ナラ、メープル、チェリー、ウォルナット、オーク、チーク、ウォルナットなど多数
紙(パルプ、
チップ)
杉(間伐材)など
(和紙:こうぞ、みつまた等)
針葉樹(ダグラスファーなど)の製材残材、パイン類(ラジアータパイン)、ユーカリ、アカシアなどの植林材

こんな所にも使われています。

用 途国産材の例輸入材の例
神社仏閣タイワンヒノキ(大径長尺材)
割り箸杉、檜(間伐材も)シラカバ、白楊(ヤナギ科アスペン)、竹 (9割以上が中国産)
爪楊枝黒文字シラカバなど
檜、樅(モミ)、桐などラワン合板(表面材は桐など)
木版画桂、朴、シナなどジェルトンなど

それぞれの樹種の詳細(産地や特長、環境評価など)については、下記のwebサイトでご覧頂けます。
森林の見える木材ガイド|木材樹種検索

輸入材、国産材を適材適所で

日本の木材自給率は28.8%(2009年林野庁「木材需給表」)。2009年に農林水産省が発表した「森林・林業再生プラン」 では、2020年まで木材自給率50%を目指すとされています。国内の木材利用を増やし、 持続可能な森へと再生させるために、私たちは輸入材も国産材も適材適所でバランス良く使っていく必要があります。

左:100%国産の天然乾燥・森林認証材で建てられた住宅(※) 右:横浜港大さん橋国際客船ターミナル

左:100%国産の天然乾燥・森林認証材の住宅(※2) 右:横浜港大さん橋国際客船ターミナル(※3)

例えば、ウッドデッキを例にあげると、住宅用には、加工しやすくDIYに向いているウェスタンレッドシダー(米スギの一種)が、1990年の花と緑の博覧会の頃から注目を集め、一般に広く使われています。また、ハードウッドと呼ばれるウリン、イペ、ジャラ、セランガンバツなどの南洋材南米材なども、商業施設のアトリウムや公園、空港、桟橋など各地で見かけます。これらは、強度と耐久性に優れており、防腐剤や塗装の処理をしなくても、15〜20年以上持つとも言われています。

一方、国産材は、耐水性や耐朽性からウッドデッキには適さないと言われた時代もあるようですが、 現在ではさまざまな樹種が利用されています。古くから線路の枕木として使われてきたクリ、抗菌力やシロアリ に対する防虫効果のあるヒバ、カラマツ。そして、スギやヒノキ。耐久性を補うオイル塗装などのメンテナンスをすれば、 国産材のウッドデッキとも長く付き合うことが可能です。

各国から日本へ輸入される木材の輸送距離

出典:ウッドマイルズ研究会

日米独の木材輸入量とウッドマイレージ

出典:ウッドマイルズ研究会 ※ウッドマイレージ(m³・km)=木材の輸送量(m³)×輸送距離(km)

国産材、それも地域材だけで建てたという住宅も増えている今。身のまわりにある木製品の材が どこから来たものか、輸入材か国産材か、違法伐採の疑いは?と、興味を持って見てください。また、 その木材がどのくらいの距離を旅してやってきたのか(ウッドマイレージ) も、考えてみましょう。

遠くの森から、たくさんのエネルギーを費やしてやってくる木材よりも、できるだけ近くの森、国産材を使った製品を選ぶことも、世界の森を守ることにつながるからです。

 

写真協力

(※1)パルプ Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by rbglasson
(※2)国産材の住宅 (C)JIDPO GOOD DESIGN AWARD [ G-Mark Library ]
(※3)横浜大さん橋 Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Nemo's great uncle
 

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