今、地球温暖化防止という面からも森への期待が高まっています。適切に手入れのされた森はCO2の吸収源となりうるからです。その話をする前に、まず地球温暖化について簡単に復習してみたいと思います。
地球温暖化とは一般に、人間の活動が活発になるにつれて「温室効果ガス」が大気中に大量に放出され、地球全体の平均気温が急激に上がり始めている現象のことをいいます。温室効果ガスとは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、フロンなどです。
出典:日刊温暖化新聞/よくわかる温暖化
地球規模で気温が上昇すると、氷河が溶けて海面が上昇したり、海水の温度が上がってハリケーンが強大化するなどの異常気象が頻発し、自然生態系や生活環境、農業などへの影響が懸念されます。2007年に出された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovermental Panel on Climate Change)」第4次評価報告書によると、世界の気温は2005年までの100年間に平均0.74℃上昇しており、大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範にわたる融解、世界平均海面水位の上昇などが観測されています。
出典:IPCC第3次評価報告書
産業革命以来、人間は石炭や石油などの化石燃料を燃やすことで、大量の二酸化炭素を大気中に排出し、結果としてこのような温暖化が起こっているのです。
IPCCの第4次報告書では、世界全体で私たち人間が化石燃料(石油、石炭、天然ガス)を燃やして、大気中に出している二酸化炭素は、年間72億炭素トン(炭素換算、以下同じ)でした。この数字は報告が出るたびに増え続けています。
一方、地球には二酸化炭素を吸収する力があります。IPCCの第4次報告書では、陸上生態系(森林など植物と土壌)は年間で9億炭素トン、海洋は22億炭素トン、つまり、現在の地球は1年間に合計31億炭素トンを吸収していると報告しています。
人間が出すCO2が年間72億炭素トン、地球の吸収量が31億炭素トンということは、半分以上のCO2は大気中に溜まり、蓄積しているということです。これが温暖化を起こしているのです。従って、人間が出す量をまずは31億炭素トン以下に減らさない限り温暖化はどんどん進んでしまいます(実際には、排出量が減れば吸収量も減るというフィードバックループアあるため、排出量の目標はどんどん下げていく必要があります)。
しかし、実際には、世界各地の森林破壊などによって地球の吸収源は減り、一方で人間活動によるCO2排出量は増え続けている……。地球全体の排出と吸収、その収支のバランスを整える必要があります。
では、一口に温暖化と言っても、どのくらい温度が上がると危険なのでしょうか? 世界の科学者の中では、「2℃以上上げてはならない」というのが有力な見解となっています。これは、「飢餓やマラリアが増え、水不足が広がる」といったリスクは、2℃ぐらいの気温上昇で急激に大きくなるという研究結果によるもの。どこを基準に2℃かと言えば、大量の化石燃料の消費が始まる「産業革命」の前と比べて、です。
ところが、前述したようにIPCCの報告(2007年)によると、地球の温度はこの100年間に0.74℃、すでに上昇しています。日本においても、気象庁によれば100年当たり1.11℃の割合で気温が上昇、特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。
2℃の上昇が大きなリスクを回避するギリギリの線だとすると、あと約1.3℃上昇しないうちに、人間が出すCO2の量を31億炭素トンよりも減らしていかなければならないのです。