カーボンオフセットとは、個人や企業が、自分が排出する温室効果ガス*の量のうち、削減が難しい分を埋め合わせる方法です。具体的には、ある場所で排出される温室効果ガスを、他の場所で実現した排出削減・吸収量などを購入することで相殺(オフセット)することを言います。実現の方法としては植林・森林保護・クリーンエネルギー事業などがあります。
「ricordo/カーボンオフセットとは?」をもとに作成
カーボンオフセットは欧米各国で始まった取組ですが、日本でもさまざまな取組が活発化しています。例えば、東京都新宿区が長野県伊那市と締結した協定では、新宿区は伊那市の私有林を毎年30ha整備することで二酸化炭素吸収量を増加させ、その増加分と等しい新宿区内の排出量をオフセットすることとしています。このように自治体間、企業と自治体間での協定が各地で始まっています。
*温室効果ガスには、二酸化炭素以外に、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン類、バーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄などがありますが、地球温暖化係数の基準となっている二酸化炭素に換算して計算されています。
2008年11月、環境省は、国内の排出削減活動や森林整備によって生じた排出削減・吸収量を認証する「オフセット・クレジット制度(以下、J-VER制度)」を創設しました。これは、カーボンオフセットのための活動がきちんと温室効果ガスの排出削減・吸収に結びついていることを証明し、排出削減・吸収量の算定精度を高め、一つの活動が複数のオフセットに利用されないようにするなど、信頼性のあるものとすることを目的としています。
「森林・林業白書(平成21年版)林野庁編」をもとに作成
このような制度を整えることで、市民、企業などがカーボンオフセットを行う際、国内における排出削減・吸収活動によるクレジットが活用できるようになり、国内の排出削減対策を推進したり、市民、企業などがカーボンオフセットをより身近なものとして認識できる効果などが期待されます。
J-VER制度など気候変動対策事業に対する第三者認証を行う「気候変動対策認証センター」のホームページで、以下のようなプロジェクトが紹介されています。
「間伐促進型プロジェクト」
森林経営活動によって二酸化炭素の吸収を増やすプロジェクトのうち、間伐を促進するタイプのもので、福島県「鹿島社有林整備吸収源プロジェクト」、秋田県「北秋田地域振興事業における上小阿仁村J-VERプロジェクト」、「鳥取県芦津財産区による森林整備活動を用いた温室効果ガス排出削減事業 -芦津の森 いきいき木こりプロジェクト-」などが登録されています。
「持続可能な森林経営促進型プロジェクト」
森林経営活動によって二酸化炭素の吸収を増やすプロジェクトのうち、吸収された炭素ストック量を維持する上で、森林施業計画や森林認証制度、地方公共団体の「企業の森づくり」制度等を活用して持続可能な森林経営を促進するものです。「近畿、中国地方における前田林業(株)森林吸収源プロジェクト〜ママとちびっ子のふれあい森林吸収源プロジェクト〜」、「三重県大台町宮川流域における持続可能な森林管理プロジェクト」などが登録されています。
「植林活動によるCO2吸収量の増大」
植林によって二酸化炭素の吸収を増やすプロジェクトで、2010年8月現在ではまだ登録がありません。
「化石燃料から未利用の木質バイオマスへのボイラー燃料代替」
「化石燃料から未利用の木質バイオマスへのボイラー燃料代替」 化石燃料を日本国内で産出された未利用の木質バイオマス(林地残材、間伐材、製材端材等)に置き換える取り組みで、北海道「美幌町峠の湯びほろ木質バイオマスボイラー活用プロジェクト(美幌町 低炭素なまちづくりプロジェクト)」、「高知県仁淀川町池川木材工業有限会社における間伐材由来木質バイオマス残渣の熱利用事業」、群馬県「尾瀬戸倉山林の間伐材を利用した温室効果ガス削減プロジェクト」などが登録されています。
「化石燃料から木質ペレットへのボイラー燃料代替」
化石燃料を木質ペレットに置き換える取り組みで、「埼玉県もくねん工房の木質ペレットを活用した化石燃料代替プロジェクト」、北海道「足寄町森林バイオマスエネルギー活用事業」、高知県「梼原町木質バイオマス地域資源循環事業」などが登録されています。
「木質ペレットストーブの使用」
木質ペレットストーブの使用もオフセット・クレジットの対象となっており、新潟県「新潟市木質ペレット使用によるJ-VERプロジェクト(石油の里から木質エネルギーの里へ代替プロジェクト)」、「長野県木質ペレットストーブの使用によるJ-VER プロジェクト」などが登録されています。
「薪ストーブにおける薪の使用」
薪ストーブで薪を使用することもオフセット・クレジットの対象となっていますが、2010年8月現在ではまだ登録がありません。
2010年8月の時点で、オフセット・クレジット(J-VER)案件一覧には森林に関する31のプロジェクトが登録されています。このように、国内の排出権取引においても、森林は様々な形で重要な役割を果たすことが期待されています。