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森学ベーシック:3.森と生物多様性:森の生き物つながり

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森学ベーシック:3 森と生物多様性:森の生き物つながり

食べるだけではない、食物連鎖

「食べる(捕食)、食べられる(被食)、分解する」ということを通して、ある一定の地域の生物はすべてつながっており、このつながりを食物連鎖あるいは食物網と呼びます。このような食物連鎖でつながっている生物をまとめて生物群集と言い、人を含めた地域の生物は単独ではなくつながりの中で共生しています。

植物は太陽エネルギーと無機質から光合成を行い、自ら養分をつくり出すことができるので「生産者」。動物は自ら養分をつくることが出来ず、他の生き物を食べることから「消費者」と言われます。生産者である植物の葉や実を消費者である昆虫や草食動物が食べ、その昆虫や草食動物は肉食動物や大型の鳥などに食べられます。また、植物の落ち葉や枯れ枝、虫や動物の排泄物や死骸などは、土中のミミズやトビムシ、ダニなどが食べ、細かくくだきます。それが土壌の微生物によって分解され、植物の成長に欠かせない養分となるのです。これらの土中の生き物たちは「分解者」と呼ばれています。

生産者である植物が無機物から合成した有機物が、消費者の動物に摂り込まれる。つまり、栄養段階の上位の生物に物質・エネルギーが供給される。この生きた物を食べる流れが「生食連鎖」です。そして、その死骸などが分解者によって二酸化炭素、水、窒素などの無機物に分解される。この無機物がふたたび栄養分として植物に摂り込まれ、そこからまた生食連鎖へとつながっていく流れを「腐食連鎖」と言います。生食連鎖と腐食連鎖からなる食物連鎖、その循環が半永久的に繰り返されているのです。

生食/腐食の連鎖が繰り返し循環する、複雑な森林生態系

トップが弱い!?生態系ピラミッド

食べる、食べられる関係では、生産者の植物をえさにするバッタが第一次消費者で、バッタを補食するネズミが第二次消費者、ネズミを補食するタヌキは第三次消費者などと、一応の序列をつけることができます。一般に上位の消費者ほど体のサイズが大きく、個体数が少なくなっています。とは言え、雑食の動物もいたりするので、消費者間の捕食・被食の関係はとても複雑です。

例えば、温帯の雑木林では、バッタやコガネムシやチョウが樹液や葉、花に頼って生存し、これら草食性の昆虫をカエルなどが食し、カエルはヘビや小鳥に捕食されます。さらに上位に居るのがタカやフクロウなどの大型鳥類やキツネ、クマ、オオカミなど大型ほ乳類です。タカやクマ、オオカミなどのように食物連鎖で最上位を占める動物を高位消費者と言います。生態系ピラミッドの頂点に位置する彼らは、広大なエサ場と下位にある動物の豊かさを必要とし、そのため生態系全体から見ると最も弱い立場に置かれています。

食物連鎖のピラミッド
食物連鎖のピラミッド。タカが生き残るための条件は厳しい。

森が荒廃すると、まず緑の葉を食べる昆虫の数が減少し、それを食べるトンボやカエルにも影響が及び、さらに数の少ないヘビや小鳥が減る。そうなるとタカやフクロウはエサ探しが困難となり真っ先に姿を消さざるを得ないわけです。これら高次消費者が生息しているかどうかで、生態系の健全性、豊かさがはかれます。

生き物たちのGive&Given

森の中には多種多様の生物が生息し、それらは食物連鎖によってつながっていますが、そのつながりは必ずしも捕食、被食、分解だけではありません。生物群集を構成する生き物たちは競争、寄生、協同など様々な相互作用を通じてもつながっているのです。そうしたことから、生物群集は共生系であると言われます。共生とは、種類の異なる生物がメリットを交換し合って共存している関係です。

森の4つの共生
樹木と外生菌根菌の共生

例えば、森林に多い花を咲かせ果実を実らせる被子植物は、花、実、根、葉をめぐって4つの共生系があります。まず、送粉共生系。多くの森林では、ハチが植物の花粉と蜜を食べ、体に花粉をつけて運び(送粉)ます。これは花と送粉者=ハチが互いに助け合って生きている共生の一つです。

鳥やサル、シカ、イノシシなどが被子植物の果実をとり、果肉だけを食べて種を糞として排出することで運ぶ。これは、種子散布共生系です。 3つ目に、菌根共生系というのがあります。植物の根には様々な菌がまとわりついていて、植物が光合成でつくりだした炭水化物を菌類に与え、その見返りに菌類は植物がミネラル等を吸収するのを助けます。

そして、もう一つが防衛共生系です。動くことの出来ない植物が、動物から食べられないようにするために、アザミ類がトゲを持つなどの物理的防衛と、トリカブトが猛毒を生産するなどの化学的防衛があります。これらに加えて一部の植物は、言わば「報酬を払って護衛者を雇う」関係を築いています。
例えば、カラスノエンドウやサクラ属は花だけでなく葉からも密が分泌され、それらの密を採りにくるアリが周辺を見張って、葉を食べようとする動物を排除します。自らの茎をアリの巣として提供することで守ってもらう植物もあります。

 
オトシブミ

森で良く見かけるこれは、卵と共生菌を巻いたオトシブミのゆりかご。ゆりかごの中で、昆虫共生菌が植物のリグニンを食べやすく分解し、幼虫の餌になるという。

このように様々な共生のネットワークによって、森林生態系は維持されています。相互依存のパートナーのどちらかが失われれば、その影響は森林生態系全体に及び、生態系機能の劣化や生物多様性の減少へ向かってしまうことになります。

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