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森学ベーシック:3.森と生物多様性:森の絶滅危惧種

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森学ベーシック:3.森と生物多様性:森の絶滅危惧種

生態系を脅かす、外来種の移入

近年、ブラックバス、マングース、アライグマのように、日本国外から本来の野生生物の移動能力をはるかに超えるスピードで移動して来た「移入種」が急増しています。そして、地域固有の生態系や生物相の存続に対して強い脅威を与えています。

ブラックバス、マングース、アライグマ

例えば、「釣り」を目的に日本に導入された北米原産のブラックバスは、いつの間にか全国各地に蔓延。どう猛な肉食魚で元々生息していた魚を次々に食べてしまい、在来種を減少させています。同様に、沖縄本島と奄美大島に移入されたマングース(東南アジアやインド原産の小型肉食獣)が急増したため、アマミノクロウサギ、ケナガネズミなど奄美大島特有の多くの希少種がマングースに捕食されて絶滅の危機に瀕しています。

森でマツの葉が赤く変色し枯死してしまう「マツ枯れ」も、その原因の一つには外来種の問題があります。北米原産で元々日本にはいなかった、長さ約1ミリ程の細長い線虫マツノザイセンチュウが、マツの若枝の皮をかじるカミキリ虫「マツノマダラカミキリ」の体内に入って寄生し、アカマツ、クロマツ、リュウキュウマツなどに侵入。幹の中にある仮道管をつまらせ、水の流れを阻害し、葉を枯らせてしまうのです。松くい虫と呼ばれるこの被害は減少傾向にあるものの、依然として我が国最大の森林病害虫被害となっています。

このように移入種は、捕食による在来種や固有種の減少、絶滅という直接的な影響を及ぼします。それだけでなく、タイワンザルとニホンザルのように近い種の混血による遺伝的汚染、餌を採るために植生を破壊するなどの脅威も与えるのです。

こうした外来種の脅威については、国も取り組んでいます。既に2005年6月から施行されている外来生物法では、入れない、捨てない、拡げない、という予防三原則のもと、厳しい規制と罰則が設けられました。罰則の一例として、特定外来生物を野外に放った場合、最高3年の懲役刑が課せられます。無自覚に飼ったり放ったりすることのないよう充分注意したいものですね。

特定外来生物等一覧(環境省/日本の外来種対策)

また、不法に捨てられる外来種なんとかしよう、という取り組みも各地で行われています。例えば東京多摩川の「おさかなポスト」。飼い続けることができなくなった魚などを一時保護し、学校などの“里親”に引き渡す活動がボランティアによって行われています。

ポストに預かった魚たちは病気などがないように、消毒してから、学校などの公的機関にひきわたされるそう。

絶滅の危機が迫る動植物たち

地球上には175万種もの生物が発見されており、これらの種は現在、一年間に約4万種という脅威的なスピードで絶滅していると言われています。このような生物種の減少は、人間による自然の開発や乱獲、外来種の移入などが原因です。

国際自然保護連合(IUCN)がまとめた2018年版のレッドリストによると、最も絶滅のおそれが高い野生生物は26,500種以上(動物:13,482種、植物:13,229種、その他:59種)とされています。

日本に生息する野生生物も例外ではなく、環境省は、絶滅のおそれのある種を的確に把握し一般への理解を広めるために「レッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)」を作成・公表しています。

環境省のレッドリスト2019によると、絶滅の危機に瀕している野生生物は3,676種。この10年で500種以上も増えています。その内、イリオモテヤマネコ、ジュゴン、クロアカコウモリ、セスジネズミなど動物が1,410種。ウジカラマツ、オオヤマイチジク、ヒカリゼニゴケ、メシマコブ、ツクシタケなど植物が2,266種となっています。

 

このような種の絶滅は地球上に生命が誕生して以来、自然のプロセスの中で絶えず起こってきたことですが、今問題となっているのは、捕獲・開発など人間の活動によりかつてないハイスピードで絶滅していることです。突然の種の絶滅は、複雑に絡み合って存在する生物間の関係を崩し、長い時間をかけて微妙なバランスを保ってきた生態系に悪影響を及ぼす危険があります。

1970年の個体数を100とした指数
WWF及びUNEP世界保全モニタリングセンター「Living Planet Report 2004」(PDFを別ウィンドウで開きます。)

オオカミ VS シカ

例えば、かつて本州、四国、九州の森に生息していた日本固有種のニホンオオカミは、「大神」と崇められていた時代もありましたが、食糧となる野生動物の減少や病気の流行、人間の駆除などによって絶滅。その結果、天敵がいなくなったイノシシやシカ、サル等の野生動物が異常繁殖しました。

中でもシカは、農林業に大きな被害をもたらしています。林業においては、造林木の摂食、角こすりによる剥皮、踏みつけ、シイタケやマツタケなどの林産物が食害を受けることもあります。農業ではイネ、ムギ、ダイズ、トウモロコシ、野菜や果実など、多くの農作物に被害が及んでいます。 と同時に、シカは国立公園などの自然林を食害、樹皮剥ぎによって枯死させたり、植生を退行させたり、貴重な植物群落を絶滅させるなど、森林生態系にまで大きな被害を与えるようになりました。

シカによる樹皮剥ぎのあと
シカによる樹皮剥ぎのあと

ヤクシカ
農林業や生態系の被害が深刻な、屋久島のヤクシカ

 

シカの急増はオオカミの絶滅だけが原因ではありませんが、食物ピラミッドの頂点にいたオオカミがいなくなることにより生態系のバランスが崩れたことは否定できません。

コウノトリの保護活動

かつて国の特別天然記念物に指定された「コウノトリ」も絶滅危惧種の一つです。戦後、個体数が減り続け、1986年には国内繁殖野生個体群は絶滅。一方では、不定期に渡来する複数のコウノトリが観察され続け人工繁殖が行われています。兵庫県豊岡市では、人工飼育のコウノトリを再野生化する取り組みが進められ、周辺の農家も農薬の散布を控える等、コウノトリの生息可能な環境を整備。2005年には世界初の放鳥が行われ、野生復帰に成功。つがいになった親鳥が毎年ひなを誕生させています。

環境省は、レッドリストによって絶滅のおそれのある野生動植物の保存を呼びかけるとともに、生息地域の自然的・社会的状況に応じて必要な保護措置を検討しています。また、豊岡市のコウノトリのように、種の保存のための様々な取り組みも各地で進められています。

 

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