地球は表面のおよそ7割が海、3割が陸地。そして、陸地の3分の1、すなわち地球全体の約1割が森林です。2010年3月にFAO(国際連合食料農業機関)が公表したデータによると、世界の森林面積は約40億ha、全陸地面積の約31%を占めています。
まず、森林分布を地域別に見てみましょう。面積ではヨーロッパが最も広く1,001百万ha、南米が832百万ha、北中米が706百万haの順となっています。また、面積に占める森林の率では、南米:51%が最も高く、次いでヨーロッパ:46%、北・中米:26%。同じ森林率を「国別」にすると、トップがフィンランド:73.9%、2位は日本で68.2%、スウェーデン:66.9%、韓国:63.5%、ロシア:47.2%と続きます。日本が世界有数の森林国であることがここでも確認できます。
気候別にみると、熱帯、乾燥、温帯、冷帯(亜寒帯)、寒帯の5つに大別されますが、このうち乾燥気候の地域は、樹木がほとんど生育できない砂漠や草原。寒帯は、極端な低温のため樹木の生育が不可能です。一方、日本をはじめとする温帯には多種多様な樹木が生育し、冷帯(亜寒帯)の北部にはタイガと呼ばれる広大な針葉樹林が広がっています。また、日射量が多く一年中気温が高い熱帯気候の雨量が豊富な地域では、アマゾンのように熱帯雨林が形成されています。
森林の種類には、原生林、天然林、人工林があり、ブラジルやインドネシアなどに広がる熱帯雨林の中には原生林が含まれます。原生林とは、何百年も人の手が入らず一度も伐採されたことのない森林のことです。多様な生物種が生存し豊かな生態系が保たれている原生林は、アマゾンの熱帯雨林、アラスカ、ロシア、カナダなど、ごく一部にしか残っていません。ヨーロッパは産業革命の頃に伐採してしまっているので基本的に原生林はほとんどなく、中国も森林の4分の3を失って植林を進めていますが、原生林はあまり残っていないのが現状です。
世界では、熱帯雨林をはじめとする貴重な森林が急速なスピードで減少しています。人間が農耕を始める前には60〜70億haの森林があったといわれますが、今では約40億haに減っています。
大きく減少したのは1950年以降です。農業を始めて以来、先人達は少しずつ木を伐採して畑をつくってきたので、今ほどハイスピードで森が減ることはありませんでした。この50年間で急速に森林が消失した主な理由は、農業用地など他用途への転換や、産業用伐採、自然災害などによるものです。温暖化、砂漠化、酸性雨などの森林への脅威も影響しています。
世界233の国と地域を網羅した包括的な森林概観であるFAO(国際連合食料農業機関)「2010年世界森林資源評価(2010年3月発表)」によると、1900年代の森林消失は年間1600万ha。農地などへの転換や自然災害によって、これだけの森林が失われました。特に、ブラジル及びインドネシアの森林消失は1990年代に最も大きく、ブラジルでは年間290万ha、インドネシアでは年間190万ha。インドネシアで起きた大規模な洪水や地滑りは、不法伐採が原因ともいわれています。また中国でも、長江上流では流水域の85%もの自然林が伐採され、1998年の大洪水の原因といわれています。
伐採により多くの森林を失った中国は、砂漠化、洪水、土砂崩れ、渇水の頻発を背景として、急激に植林による緑化を進めました。このような大規模な造林プログラムは、インドやベトナムでも実施され、ここ10年は、世界全体で年間約220万haの純増加を記録するまでになりました。
そうした結果、減少分から増加分を差し引いた「純減少面積」は、2000年から2010年は年間520万ha。これは東京都の約24倍もの面積ですが、90年代の年間830万haに比べれば大幅に減っています。森林消失率が初めて減少に転じたのです。また、全体の森林消失面積も、1900年代の年間1600万から1300万haへとペースダウンしました。
FAOは、新興国の環境意識変化による造林の実現、世界的な森林消失率の減少を認めつつも、「地球温暖化防止の視点からも森林減少が加速しないよう、各国は森林の保全と管理を強化しなければならない」と警告しています。